154 榊山
- 1 日前
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海から一番遠い地点経て

冬の間休んでいた山歩きを再開し、4月中旬の土曜日に佐久市臼田の榊(さかき)山(1258メートル)に登った。目当ては山頂よりも、その下方にある「日本で海岸線から一番遠い地点」。到達し、日本の中央にいる気分に浸った。
この日は、スタッフを務める長野県カルチャーセンター「里山講座」の本年度第1回の山行。山仲間たちと7時に長野駅東口をバスで出発。長野インターから上信越道を走り、小諸ジャンクションで中部横断道に。
佐久南インターで降り、国道141号を南下。小海線臼田駅近くから県道に入り、群馬県境の田口峠方面へ向かう。コバルトブルーの水をたたえた雨川砂防ダム湖を過ぎた辺りでバスを降り、滝ケ沢林道を歩き始める。

快適な林道歩きは30分ほどで終わり、沢底の丸木橋を渡って対岸から登山道に入る。ここからは何度も渡渉を繰り返す荒れた沢歩きだ。やがて行く手を遮る倒木が多くなり、またいだり、くぐったりしながら進む。
沢沿いにはリンドウに似た紫色の花を付けたハシリドコロが目に付く。㈸字状の谷が狭まり、沢の水が枯れてくると急な坂道に。登り詰めると、緩やかな斜面に白地に赤い文字で書かれた「海遠点」の標識が見えてきた。

現地の説明板によると、この場所は1996年に国土地理院の職員の計算によって発見された。太平洋と日本海に接する円の中心から海岸線までの距離が114.85キロ余で全国最長。2番目は北海道石狩山地内の108・2キロという。
標識の前で全員そろって写真を撮る。後日、この写真とそれぞれの住所、氏名を佐久市臼田支所に送ると、到達した「認定証」が郵送されてくる。
ゆっくり休憩した後、さらに先の榊山へ向かう。ここまでは木々に結わえつけられたピンクのテープ(赤布)が目印だったが、肝心のテープが見当たらない。
くるぶしまで埋まる落ち葉の中、稜線を目指す。緩やかな丘のような山を越え、もうひと山登った所が榊山の山頂部だ。雑木林に囲まれ眺望は利かない。
さほど広くない頂上には四等三角点が置かれ、山頂標識の代わりに「榊山」と書かれた小さな板きれが樹木に打ち付けられていた。近くに「海遠点」がなければ、訪れる人もいない山なのだろう。

帰路は同じルートを下り、「日本で海岸線から一番遠い地点」で昼食に。一本の長い倒木が、大勢座れるベンチ代わりになった。
再び荒れた沢を慎重に下山。林道歩きの後バスに乗り、佐久市内の天然温泉が売りのホテルで入浴。17時過ぎに帰宅した。天気も良く、久しぶりの山歩きを楽しんだ。
(横内房寿)
2025年5月10日号掲載