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07 内集団バイアス 差別感情を生む人間心理

プロ野球などのスポーツファンは、ひいきのチームが負け続けると、文句を言ったり、ぼやいたりします。

 人によっては観戦中にやじを飛ばします。

 ところが不思議なもので、ファン以外の人から悪口を言われると、ひいきチームの味方をし始めます。また、出演タレントが自分の出身県の名物や行事、習慣、県民性を紹介する長寿テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」の視聴者は、自分の出身地が取り上げられると、思わず真剣に見てしまいます。

 これらに共通するのは、行動経済学で言う「内集団バイアス」という偏った認知が働いている点です。人は、自分が属する「内集団」に対しては、それ以外の「外集団」よりも、好意的な対応をし、優れていると評価します。いわゆる身内びいきです。

 スポーツファンにとって応援するチームの選手やファン、「秘密のケンミンSHOW」の視聴者にとって同郷のタレントは内集団です。

 英国ブリストル大学のヘンリー・タジフェル教授は、「内集団バイアス」を証明する実験を行いました。互いに面識のない人を集めて、コインの裏表で二つの集団に分けますが、「特定タイプの芸術を好む」集団であると伝えます。人々はコインで分けられたと知らずに、同じ集団のメンバーに親しみを感じ、仲間意識も生まれたのです。

 このバイアスは意外に強力で、方法次第で良くも悪くも効果を発揮します。企業や部署などが内集団バイアスによって、結束を固めて成果を出すのは良い例です。逆に、ある人種が他の人種を劣等な外集団と見なして差別するような悪い事例もあります。

 個人であれ集団であれ、優れた点と劣った点の両方があることは明白です。そうした常識を忘れさせ、差別などの感情を生むのが内集団バイアスです。人は誰もが何かの集団に属して生活しています。そこでのストレスを減らし、心地よい場所にするためにも、集団における人間心理について心得ておくのは大切なことといえるでしょう。

(マーケティングコンサルタント)


(2020年7月11日掲載)

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