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TOKYOタクシー

  • 11月22日
  • 読了時間: 2分

=1時間43分

長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)、

長野相生座・ロキシー(☎︎232・3016))で公開中

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(C)2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会

94歳の山田洋次監督 集大成の人間ドラマ

 山田洋次監督・脚本の「TOKYOタクシー」は、人生の終活に臨む老女とタクシー運転手との一期一会の出会いが紡ぐ心温まる人間ドラマだ。


 タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は娘の進学費用や家賃に車検と大きな出費を抱え、頭を悩ませながら休みなく働いていた。ある日依頼されたのは、85歳のマダム高野すみれ(倍賞千恵子)を東京から神奈川県葉山の高齢者施設まで送り届ける仕事。すみれから「東京の見納めに思い出の場所を寄り道したい」と頼まれ、さまざまな場所を巡ることに。そこで語られたのは、すみれの壮絶な過去だった。初めは互いに不愛想な2人だったが、会話を交わすうちに次第に打ち解け心を通わせてゆく。


 フランスの大ヒット映画「パリタクシー」、(2022年、クリスチャン・カリオン監督)を原案にした山田監督91本目の本作は主演の2人のほか、蒼井優、笹野高史、迫田孝也らこれまで山田監督作品に出演してきたまさに「山田組」の面々が顔をそろえている。


 現在94歳の監督の集大成とも思える、オマージュを捧げるようなシーンが登場する。なかでも一番出演作が多く、「男はつらいよ」シリーズでフーテンの寅さんこと車寅次郎の妹さくら役の倍賞が今回演じた役名はすみれ。すみれを乗せたタクシーの最初の待ち合わせ場所は同シリーズでおなじみの葛飾柴又・帝釈天の門前で、門からは御前様が、仲見世通りからは寅さんがひょっこり姿を現しそうな気がするのも山田監督作品ならでは。すみれが着こなすおしゃれで上品なマダムファッションも見どころだ。


 東京タワー、スカイツリー、浅草寺、上野・不忍池など観光名所巡りさながらだが、そこに描かれているのは時代の変遷だ。言問橋では、多くの命を奪った東京大空襲のシーンに込められた戦争への怒り。戦後の復興の中で若き日のすみれ(蒼井優)が体験した恋愛や結婚では昭和の事件や当時の世相を映し出す。


 過去から未来へと命のバトンを渡し受け取る人々。ラストまで何が起こるか分からない。人生はそんな驚きに満ちている。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年11月22日号掲載

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