雪風 YUKIKAZE
- 8月23日
- 読了時間: 2分
=120分
長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)で公開中

(C)2025 Yukikaze Partners.
過酷な戦場から帰還 「幸運艦」の人間ドラマ
太平洋戦争下、ミッドウェー海戦に始まり、マリアナ沖海戦、ガダルカナルなど過酷な戦場から帰還し、「幸運艦」とも呼ばれた日本海軍の駆逐艦があった—。「雪風 YUKIKAZE」は、実在した駆逐艦「雪風」の史実を基に、多くの兵士たちを救った乗員たちを描いた人間ドラマだ。
駆逐艦「雪風」の新たな艦長として赴任した寺澤(竹野内豊)は、乗艦早々に米軍との戦闘に直面する。寺澤の冷静沈着な対応と的確な操舵で危機を乗り越えるが、そこには「雪風」を知り尽くす先任伍長、早瀬(玉木宏)の、常日頃の怠らない艦の点検と乗員たちをまとめる働きがあった。いくつもの死線を乗り越え、艦員たちとの信頼の絆が深まっていく中、日米が雌雄を決するレイテ沖海戦が始まる。
著名な「大和」や「武蔵」といった大型の戦艦に比べて、駆逐艦は小型で軽量だが、高速で小回りが利く。さまざまな場面で臨機応変に敵艦に立ち向かい、「海の何でも屋」とも言われるユニークな存在だ。物資や人の輸送だけでなく、時には魚雷戦で真っ向から敵艦と対峙する。小さきものが巨大な敵に果敢に挑む姿は痛快だ。「大和」や「武蔵」を主役にした作品は多いが、脇役の駆逐艦がこんなにも重要な任務を担っていたことを知り、驚かされた。
敗戦が近づくにつれ死ぬことを前提にしたような破滅的な作戦が実行に移され、多くの若者たちが駆り出されていった。武士道を重んじる寺澤は、命を軽視する上層部の残酷な指示に難色を示しながらも、自身の強い信念で命を守り抜こうとする。全員が生きて帰ることを目標に、「雪風」の乗組員は堂々と戦い続け、沈没していく戦艦から海に投げ出された兵士を救う。しかも敵味方関係なく。終戦後、米国海軍関係者から、第2次世界大戦を通じて最優秀戦艦と絶賛されたという。
あの日、彼らが救ったのは日本の未来。戦後80年を迎え、伝説の不沈艦「雪風」の高潔な物語に心を打たれる。
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
2025年8月23日号掲載



