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港のひかり

  • 3 日前
  • 読了時間: 2分

=1時間59分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で公開中

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(C)2025「港のひかり」製作委員会

孤独抱えた元やくざ 「自己犠牲」の生きざま

 1960年代、東映の一時代を築きあげた任侠(にんきょう)映画は義理人情とやくざの人間模様を独特の美学で描いた。「港のひかり」は、往年の任侠映画の主人公を彷彿(ほうふつ)とさせる、孤独を抱えた元やくざと不遇な少年の出会いと人生の機微を描いたヒューマンドラマだ。


 北陸の小さな港町で漁師として働く三浦(舘ひろし)は元やくざ。寡黙で他人と関わらず細々と暮らしている。ある日、同級生たちにいじめられていた目の不自由な少年、幸太を助ける。両親を交通事故で亡くし視力を失った幸太が、引き取られた家でも虐待を受けていることを知った三浦は、幸太を不憫(ふびん)に思い漁に同行させる。


 「おじさん」と慕う純粋な少年と絆を深めていった三浦は、幸太に目の手術を受けさせようと決意し、決別したはずの過去と再び向かい合う。


 オリジナル脚本を手掛けたのは日本アカデミー賞最優秀作品賞の「新聞記者」(2019年)や最優秀監督賞を受賞した「正体」(24年)の藤井道人監督。「ヤクザと家族 The Family」(21年)に出演した舘ひろしが背中で人生を語る後ろ姿で、いぶし銀のような存在感を放つ。


 撮影監督は日本映画界の名カメラマン木村大作。全編35ミリフィルムカメラで撮影された北陸の刻々と変化する海と空。自然のうつろいを捉えたロケーションが美しく、映像そのものが心に染みてくる。


 撮影は石川県輪島で2023年11月から12月に行われ、終了直後に能登半島地震が発生。失われてしまった能登の漁村の風景や輪島の観光名所、朝市通りなどが映し出される。


 共演は若手の真栄田郷敦のほか笹野高史、市村正親ら演技派が脇を固めているが、暴力団組員を演じた椎名桔平、斎藤工らの怪演が空恐ろしい。


 藤井監督がテーマにしたのは「自己犠牲」。「誰かのために生きられるか」という信条のために、自身を犠牲にして少年に光を与えようとした男の生きざまが胸を打つ。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年11月15日号掲載

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