愚か者の身分
- 10月18日
- 読了時間: 2分
=2時間10分
長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)で 10月24日(金)から公開

(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会
裏社会から脱出図る 若者らの過酷な運命
社会問題となっている「闇バイト」。「愚か者の身分」は、生活苦から犯罪に手を染めた裏社会から抜け出そうとする若者たちを描いたクライムサスペンス映画だ。
新宿・歌舞伎町。兄弟のように身を寄せ合って暮らすタクヤ(北村匠海)とマモル(林裕太)は、SNSで見つけた「獲物」から個人情報を引き出す戸籍売買で稼ぐ犯罪組織の闇バイトで生計をたてていた。裏社会に生きるタクヤが唯一信頼し、兄貴分として慕うのは運び屋の梶谷(綾野剛)だ。
組織の幹部が保管していた大金が盗まれ、タクヤは犯人に仕立てられて組織から執拗(しつよう)に命を狙われる。タクヤは梶谷の手を借りて、マモルと共に裏社会から抜け出そうとするが…。
タクヤとマモル、そして梶谷の3人の過去と出会いをそれぞれの視点で交差させながら、現在へと一つの物語に昇華させてゆく。第2回大藪春彦新人賞を受賞した西尾潤の原作を基に、この巧みな脚本を手掛けたのは、「ある男」(2022年)で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した向井康介。犯罪行為は決して許されるものではないが、彼らが道を踏み外し周囲から見放されたつらい過去を知ることで、若者の格差と貧困という日本社会が抱える闇が見えてくる。
犯罪組織が牛耳る裏社会が舞台なだけに、目を背けたくなる残酷なシーンはあるものの、印象深いのは、普通の若者のようにはしゃいだりいたずらしたりする明るい笑顔に隠された切なさだ。精いっぱい青春を味わいながら、ふとした瞬間に犯罪者である後ろめたさが顔を出す。心の奥底にピュアな感情のある彼らにはなんとか立ち直ってほしいと思わずにいられない。
悪の世界に落ちた人間たちを待ち受ける過酷な運命。現実にニュースなどで見聞きする事件を知るだけに、抜け出そうとするタクヤたちのあがきに心を揺さぶられる。
9月に開催された韓国の釜山国際映画祭で、主演の北村匠海、林裕太、綾野剛が3人そろって最優秀俳優賞を受賞し高い評価を受けた。
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
2025年10月18日号掲載



