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ナイトフラワー

  • 11月29日
  • 読了時間: 2分

=2時間4分

長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)で公開中

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(C)2025「ナイトフラワー」製作委員会

借金苦の2児の母が 危険な闇の世界へ

 借金苦の2児の母親が、夜の街でドラッグの密売人に—。「ナイトフラワー」は、危険な闇の世界に足を踏み入れたヒロインの出会いと運命をスリリングに描いたヒューマンクライムサスペンスだ。


 夫が残した借金の取り立て屋に追われ、関西から東京に逃げてきた夏希(北川景子)は、小学生の娘と幼い息子を抱えるシングルマザー。昼夜掛け持ちで働くが、食べることにも事欠く日々に追い詰められている。そんなある日、路上でドラッグの密売を目撃した夏希は、金欲しさに密売に手を染めるが、裏社会の容赦ない制裁を受けてしまう。「一夜限りしか咲かない花」=ナイトフラワー。闇の世界で夏希は花を咲かせられるのか。


 夏希を助けたのは女性格闘家を目指し、ジムで激しいトレーニングをこなす多摩恵(森田望智)だった。世間知らずで向こう見ずな夏希を見かねてボディーガードを引き受け、いつしか女2人組の売人として悪の世界に行き場を見いだすのだった。


 暴力で男の力に屈しても、ここに登場するのは泣き寝入りするだけの女ではない。多摩恵が格闘技で鍛えた技で男たちを倒し、子どもたちにとって頼もしい父親のように憧れの存在になってゆく。


 孤独を抱えて生きてきた多摩恵にとって、夏希一家との時間は家族という幸せそのもの。まるで擬似家族のように温かさに満ちた時間だ。多摩恵役の森田望智は女優だが、本格的にトレーニングを積んだというだけに、半端ないリングシーンはエキサイティングだ。美しさをかなぐり捨て、ボロボロになった北川景子の迫真の演技も圧巻だ。


 女2人のバディものとしての面白さはハリウッド映画「テルマ&ルイーズ」(1991年)のようだ。普通の女性が犯行を重ねるうち次第に大胆になり、ついには2人組の犯罪者として警察だけでなく組織からも追われるはめに。


 トランスジェンダーをテーマにした「ミッドナイトスワン」(2020年)で原作と脚本を手掛け、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治監督が、再び原作と脚本を手掛けている。本物の強さとは何か。決して悪は許されないが、夏希の限りなく強い母性に心を揺さぶられる。


(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年11月29日号掲載

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