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木挽町のあだ討ち

  • 2月21日
  • 読了時間: 2分

=2時間

長野千石劇場(☎︎226・7665)で2月27日(金)から公開

(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会  (C)2023 永井紗耶子/新潮社

あだ討ちの真相とは 幾層もの複雑な物語

 「木挽町のあだ討ち」は、直木賞と山本周五郎賞を受賞し、「このミステリーがすごい」2024年の上位にランクインした永井紗耶子の同名時代小説の映画化。あだ討ちを目撃した人々の証言を重ねながら真実にたどり着く展開の面白さと物語の映像美から、新作歌舞伎として舞台化もされている。


 文化7(1810)年の冬、千秋楽の芝居がはねた江戸・木挽町の森田座の裏通り。ゴロツキたちに絡まれた深紅の振り袖姿の娘がはらりと着物を脱ぎ捨てると、白装束の凛々しい美少年だった。「我こそは伊納清左衛門一子、菊之助」。美濃遠山藩の伊納菊之助(長尾謙杜)がそう名乗ると、剣と剣の激しい立ち回りが始まった。相手は父親を殺し出奔した下手人、作兵衛(北村一輝)。大勢の野次馬たちが見つめるなか、見事、敵の首を打ち取ったあだ討ちに歓声が沸いた。


 それから1年半後。元藩士で菊之助の縁者という田舎侍、加瀬総一郎(柄本佑)が森田座を訪ねてきた。あだ討ちの真相を知りたいと、目撃した人々に熱心に聞き込みを続ける。巧みな口上で客を集める木戸芸者、元女形の衣装方や小道具方、殺陣の振付師,そして戯作者の金治(渡辺謙)。次々と明かされてゆく菊之助の素顔と真実は驚きに満ちていた。


 森田座の小屋でかかる芝居の数々は、映画の中の映画を見るような楽しみ。しかも千秋楽の舞台の演目は「仮名手本忠臣蔵」だ。映画の観客はいつしか芝居小屋の観客となり、あだ討ちの目撃者となってゆく。この没入感がたまらない。


 原作の魅力の一つが、目撃者の証言だけでなく、森田座にたどり着くまでのそれぞれの生きざまが一本の物語のように書き込まれ、江戸の文化や庶民の暮らしが人情たっぷりに描かれていること。映画では演技派が脇を固め、小説の世界を再現している。芝居小屋の裏方たちの存在から、現代の歌舞伎へとつながる歴史的な知識にうなずくばかりだ。


 幾層にも重ねられた複雑な物語の脚本は、江戸歌舞伎物を数多く手がけた源孝志監督。エンターテインメントと謎解きが見事に融合された一本だ。


 (日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2026年2月21日号掲載

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