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ふつうの子ども

  • 9月27日
  • 読了時間: 2分

=1時間36分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で10月3日(金)から公開

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(C)2025「ふつうの子ども」製作委員会

三者三様の家族から 見える日本の家族

 「普通だけど普通じゃない」「子どもらしいけど子どもらしくない」。そんな面白さが魅力の「ふつうの子ども」。キネマ旬報1位にも選ばれた「そこのみにて光輝く」(2014年)や「きみはいい子」(15年)で国内外から高い評価を受けた呉美保監督が脚本家・高田亮と組んだオリジナルストーリーで描く人間ドラマだ。


 小学4年生の唯士(ゆいし)(嶋田鉄太)は、母・恵子(蒼井優)の教育方針で伸び伸びと育った普通の男の子。最近は同級生の女の子、心愛(ここあ)(瑠璃)が気になって毎日どきどきしている。心愛は環境問題に真剣で、「子どもの未来を奪うのは大人が悪い」と担任の浅井先生(風間俊介)にくってかかるほどだ。心愛に近づきたい一心の唯士は、自分も環境問題に関心があるふりをするが、そこにやんちゃな問題児、陽斗(はると)も仲間に加わり、3人の「環境活動」は次第にエスカレートしてゆく。


 昨年公開された吉沢亮主演の「ぼくが生きてる、ふたつの世界」では、耳の聞こえない両親から生まれた子どもの成長と家族の絆を描いた呉監督。自身も2人の子の母親である監督が描くのは子どもたちの生き生きとした自然な姿だ。虫や駄菓子に夢中かと思えば、恋心を抱いたりけんかをしたり。自分の世界をちゃんと生きている。クラスメート役はオーディションで選ばれた子どもたち。演技と感じさせない子ども同士のリアルさが新鮮だ。


 その背後にある三者三様の家庭から、今の日本の家族の在り方と子どもたちを取り巻く社会が見えてくる。通信機器を持たせ子どもを遠隔操作、夜遅くまでの塾通い、親の感情を押し付けたり、子育ては母親まかせの父親など、子育て中の親の悩みも等身大で共感を呼ぶ。


 少年少女の3人が大人の世界に対抗する姿をみずみずしく描いたイギリス映画「小さな恋のメロディ」(1971年)をふと思い出した。あのキラキラした甘酢っぱさが懐かしい。そこに現実的な環境問題を絡ませるのはなんとも今風か。子どもの目線にかえって周りを見回すとさまざまなものが見えてくる。「ふつう」とはなんだろう?

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年9月27日号掲載

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