宝島
- 9月20日
- 読了時間: 2分
=3時間11分
長野千石劇場(☎︎226・7665)で公開中

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
米軍統治下の沖縄で あらがう若者の怒り
「宝島」は、敗戦後の沖縄を舞台に、米軍統治時代の1952年から日本に復帰した1972年まで、時代に翻弄(ほんろう)されながらも時代にあらがおうとした若者たちの物語。直木賞を受賞した真藤順丈の同名小説の映画化だ。
1952年の沖縄コザ。米軍基地に忍び込んでは略奪した品物を住民に分け与えていた「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。リーダーのオン(永山瑛太)が、ある夜の襲撃事件をきっかけに姿を消してしまう。島の英雄といわれるオンを慕う幼なじみの3人組、グスク(妻夫木聡)とオンの弟のレイ(窪田正孝)、ヤマコ(広瀬すず)たちはオンの行方を探しながら、それぞれの道を歩みだす。グスクは刑事に、ヤマコは小学校の教師に、そしてレイはやくざになった。
米兵による暴行、ひき逃げ、性犯罪等の事件、米軍飛行機墜落事故、ベトナム戦争などがあり、米国による圧制と人権侵害に対して爆発した人々の怒りと憤りは、1970年に起きたコザ暴動へとつながる。
当初は本土復帰50年に当たる2022年に公開予定だったが、コロナ禍で撮影がたびたび延期となった。大友啓史監督はその度に原作を読み返し、脚本も改稿を重ねていった。最初のテーマだった「踏みにじられた怒り」から徐々に心境が変化し、「沖縄の人々が流した血と涙、汗を映画で追体験して見る人に伝えたい」という使命感へと変わったという。
沖縄の人々の苦難の歴史を知るほどにエンターテインメントとして届けることの難しさを痛感したそうだ。大友監督が本物にこだわり撮影されたコザ暴動。原作が放つ熱量を見事に再現したエキサイティングなシーンに圧倒される。
「宝島」とともにつけられた英語のサブタイトル「ヒーローズ・アイランド」。本物のヒーローとは自分を犠牲にしても誰かのために尽くすこと。沖縄が米軍の統治下にあった時代、市井には無名のヒーローたちがいた。若者たちの姿を通して描かれた沖縄の史実はあまりにも残酷だが、あふれる生命力に救われる。
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
2025年9月20日号掲載



