159 八方尾根
- 9月20日
- 読了時間: 3分
池も山並みもくっきりと

うだるような暑さが続いた8月最後の土曜日、高山の涼しさに浸りたくて手軽に行ける白馬村の八方尾根を訪れた。願ってもない好天に恵まれ、吹き渡る涼風や「北アルプスの鏡」と称される八方池(標高2060メートル)と、背後に連なる白馬三山などの大景観を楽しんだ。
女性3人を含む山仲間5人で6時に集合し、車1台に全員が乗って長野市内を出発。五輪道路で白馬村へ向かう。無料化された中条のトンネルを抜けると、いつも見える鹿島槍ケ岳の姿が霧で見えない。小川村から白馬村に入っても、北アルプスは雲がかかったままだ。
それでも日差しが強まるにつれ霧や雲は上がり、予報通りの好天になってきた。目指す八方尾根や白馬の山々も上部がくっきりと見えるようになる。
ゴンドラ乗り場近くの有料駐車場に車を置き、7時半前に八方駅に。駅舎の前には既に乗車券を買い求める人たちで長蛇の列ができていた。
我々は仲間が気を利かせて事前にコンビニで切符を買っておいてくれたため、そのまま乗車待ちの列に並ぶ。8時始発の6人乗りゴンドラリフトに乗り込み、終点の兎平へ。

続いて乗った4人乗りリフトの下は、いつもなら色とりどりのお花畑が広がる。だが、盆過ぎで時期が遅かったのと連日の猛暑の影響か、今回は花が少ない。ピンクのシモツケソウは既に枯れ、黄色のアキノキリンソウやマルバダケブキなどが目を引く。
鎌池湿原を経て、もう1本の4人乗りリフトを乗り継ぐと登山口の八方池山荘だ。見上げると、稜線には唐松岳や八方池に向かう登山者や観光客の列が。週末の好天とあって、その数は1000人を下るまい。
山荘の脇から急な上りに入る。表面がつるつるした蛇紋岩がゴロゴロしていて歩きにくい。トイレもある第2ケルンの手前で休憩し、八方池を見下ろす第3ケルンへ。
正面に、唐松岳の右手にそびえる不帰ノ嶮のゴツゴツした姿が見えてきた。㈵峰・㈼峰・㈽峰と続く山容は日本離れしている。
第3ケルンの脇から、八方池と背後の白馬三山の眺めを堪能する。惜しむらくは山頂部に薄い雲がかかっていた。時折、白馬鑓ケ岳や白馬岳は頭を見せるものの、30分ほど待っても三山がそろって頂まで見える時はなかった。
とはいえ、これだけの眺めはやはり「日本を代表する山岳景観」の一つといえるだろう。
昼食には早かったため、さらに上まで行くことにする。下の樺、上の樺と呼ぶダケカンバの樹林帯を抜けると雪渓が現れた。この時季もまだ残る、扇の形をした扇雪渓だ。
雪渓のそばで昼食にする。雪面から吹き寄せる風は涼しさを通り越して寒いぐらい。猛暑にあえぐ下界の人には申し訳ないほどだ。

帰路は八方池の周囲を巡り、第2ケルンから木道を通る自然研究路を下る。所々に花の名前を書いた標識があり、高山植物を学べる。再びリフトとゴンドラを乗り継いで下山した。八方尾根を訪れたのは3回目だが、初めて絶景を目にすることができた。
(横内房寿)
2025年9月20日号掲載



