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158 鼻曲山

  • 8月30日
  • 読了時間: 3分

「森の妖精」たちに出合う

「森の妖精」と呼ばれるレンゲショウマのかれんな花
「森の妖精」と呼ばれるレンゲショウマのかれんな花

 猛暑日が続いた8月上旬の土曜日、スタッフを務める長野県カルチャーセンター「里山講座」の一行と長野・群馬県境の鼻曲山(はなまがりやま)(1655メートル)に登った。この山の北斜面には「森の妖精」と呼ばれる希少種のレンゲショウマの群生地があり、うつむきに開いたかれんな花を楽しんだ。


 長野駅東口を7時にバスで出発。長野インターから上信越道を走り、上田インターで降りる。国道144号で鳥居峠を越えて群馬県に。一面に広がる嬬恋村のキャベツ畑を横切り、「北軽井沢」と称する一帯を抜け、長野原町と高崎市境の二度上(あげ)峠へ。


 峠でバスを降り、少し上った見晴らし台が登山口だ。西側に浅間山が大きく見えるが、残念ながら山頂部には厚い雲がかかっていた。


 9時半ころ登り始め、樹林の中を進む。ナラの美林が続き、照り付ける太陽を遮ってくれるのでありがたい。ほどなく「獅子岩」という大きな岩が現れ、3メートルほどの落差を慎重に下る。


 1時間ほどで中間点手前の氷妻山(ひづまさん)に到着。休憩した後、アップダウンが続く道を進むと、樹間越しに山頂部が見えてきた。山名の由来になったのか、人間の鼻のように見える。


 さらに先へ進み薄暗い急斜面を登って行くと、レンゲショウマが点々と現れてきた。まだ早いのか固い玉のようなつぼみが多いが、淡い紫色の花が開いている茎もチラホラ。


樹間から見えた人間の鼻のような山頂部
樹間から見えた人間の鼻のような山頂部

 「蓮華」とも呼ぶハスの花を、ちょうど逆さにしたような姿だ。小さな提灯(ちょうちん)のようにも見える。「森の妖精」といわれ、県内ではほとんど見かけない花だけに皆熱心に写真を撮っていた。


 群生地の上の急坂を登り詰めると、下山口の国境平へ向かう登山道との分岐に。左折してしばらく進むと一番高い北峰に出た。そのわずか先を下った南峰が山頂標識のある地点だ。ここで昼食にする。


 この日は周囲が雲に覆われ何も見えなかったが、7月末に下見に来た時は南峰の先端から妙義の山々を見下ろし、群馬側が遠くまで見渡せた。


 帰路は分岐から国境平へ向かう登山道に入る。緩やかな道をどんどん下る。最初は道幅も広く快適だと思っていたが、そのうちに道の中央部が大きくえぐれ、上部をう回しなくてはならなくなる。


 えぐれた底の部分を通らざるを得ない時は、脇に張ってあるトラロープが頼りだ。昨秋登った近くの留夫山(とめぶやま)や黒斑山(くろふやま)もそうだったが、浅間山の噴火で火山灰が降り積もっているこの辺の山は雨による浸食が激しい。


 やがて道はだんだん細くなり、足元をササが覆う。スキー場の最上部に出ると展望が開け、その先には朽ちかかったツリーハウスが幾つも現れてきた。

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 下りきった辺りに貯木場があり、その脇を通り過ぎると国境平に出た。上りでは多くの登山者と行き会ったが、下りでは一人も会わなかった。このルートはほとんど歩く人がいない感じだ。


 下山後は先回りして待っていてくれたバスに乗り、新鹿沢温泉の立ち寄り湯へ。汗を流した後、再び往路と同じコースで長野へ。かわいい「妖精」たちに会え、心弾む山旅だった。

(横内房寿)


2025年8月30日号掲載

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