143 尾瀬ケ原
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143 尾瀬ケ原

本州最大の湿原の一角に

草紅葉が始まった広大な尾瀬ケ原

 やっと秋めいてきた9月下旬の平日、格安バスツアーを利用して山仲間3人で尾瀬ケ原を訪れた。群馬・福島・新潟・栃木4県にまたがる尾瀬国立公園は、本州最大の湿原で知られる。訪れた時は草紅葉が始まっていた。

 二つの百名山、東の燧ケ岳(ひうちがたけ=2356メートル)と西の至仏山(しぶつさん=2228メートル)に挟まれた盆地状の尾瀬ケ原は標高約1400メートル。東西6キロ、南北2キロと広い。長野からの日帰りツアーでは一角を歩けただけだった。

 6時に長野インター近くの集合場所を出発。尾瀬ヘはマイクロバスしか入れないため、ほぼ満席だ。上信越道で群馬に入り、藤岡ジャンクションから関越道を北上。沼田インターで降り、片品村から尾瀬へ向かう。途中で現地ガイドさん2人を乗せ、群馬側玄関口の鳩待峠(はとまちとうげ)へ。

樹林帯の中も木道が整備されている

 ここまで長野から4時間。帰りも4時間はかかるため、尾瀬での滞在時間は5時間弱。参加者20人余を2班に分け、我々は健脚組に。準備体操をして10時半に歩き始める。

 登山道の入り口には、移入植物の侵入防止のため種子落としマットが。ここから300メートルほどは、わざと石ゴロの悪路にしてある。ガイドさんによると、軽装で入る人には無理と分かってもらう「ハイヒール帰し」というのだそうだ。

 その先からは、樹林帯の中も木道が続く。環境保護のため張り巡らされた尾瀬の木道は全長60キロ以上という。

 足元の板を見ると、隅に東京電力のロゴマークと設置年の焼き印が。尾瀬の群馬県側は東電の所有地で、水源保護のため同社も木道設置に協力している。

 大きなブナやミズナラ、ダケカンバなどが茂る。手つかずの広葉樹の森を1時間ほど下ると、尾瀬ケ原の入り口の山ノ鼻だ。

池塘に浮くヒツジグサ

 立派なビジターセンターや山小屋がある。100円のチップ制トイレの利用時に驚いた。入り口にQRコードが張ってあり、スマホ決済サービスのペイペイで支払いができる。環境保護先進地の尾瀬らしい取り組みだ。

 ツアーで出された昼食用の群馬名物まいたけ弁当を食べ、湿原の中へ。あいにく小雨模様で、至仏山や燧ケ岳はガスで見えずじまい。

 それでも湿原は草紅葉が始まり、一面薄茶色。点在する池塘の中には、ハスの葉を小さくしたようなヒツジグサが浮かぶ所も。世界的にも珍しいというナガバノモウセンゴケの赤い葉も見ることができた。

 湿原を1時間ほど歩き、牛首分岐手前の大きな池塘の中に燧ケ岳が映る「逆さ燧」まで行ったところでUターン。同じルートを戻る。樹林帯の中は、今度は急な上りに。一汗かいたところで鳩待峠に着いた。

 帰路に立ち寄った片品村の道の駅で、群馬県割クーポン券を使って土産を買う。後はバスの中でひたすら眠りながら長野へ。

 横内房寿


2023年10月14日号掲載

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