介護・医療現場で 重症化を防ぐために
- 8月30日
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2年かけて予防ケア研修 スタッフのプロ意識育成も狙い

新田町の特養「プリマベーラ」
介護・医療の現場で重症化に苦しむ高齢者を一人でも減らしたい—。新田町の特別養護老人ホーム「プリマベーラ」のスタッフ65人が、今夏から2年かけて、重度化予防ケアの研修に取り組む。このほど2日間にわたって、同施設でキックオフミーティングがあり、プロジェクトの講師を務める日本重度化予防ケア推進協議会理事長で作業療法士の香川寛(ゆたか)さん(45)=広島県廿日市市=が「現場の重度化とケアの可能性」と題して話した。
重度化予防ケアは、医療、介護に携わる支援者が要介護状態にある利用者の状態悪化を防ぐために必要な知識や技術を習得し、実践することを目指す。
同施設では研修を通して、スタッフ全員がこれまでのケア方法をブラッシュアップ。利用者の重度化を予防、改善するとともに、ケアに携わるスタッフがやりがいとプロ意識を持って長く働ける環境づくりを目的に導入を決めた。同協議会が提唱する重度化予防のためのケア技術の導入は県内特別養護老人ホームなど介護施設では初。

香川さんは、日本の重度化予防ケアのパイオニア。「現場での重度化の予防・改善と結果を出すことができる人材育成」を理念に全国の施設でコンサルティングや研修を展開している。
キックオフミーティングで香川さんは「重度化予防ケアは、結論からいうと現場の健康管理をするため皆さんの仕事を変えていくこと」と説明。「健康管理のためにこの手法をやることで結果が出る。その結果に対して仕事のやりがいを持ってほしい」と呼びかけた。また、「重度になる人たちの置かれている背景は共通。要は、ここを予防、対応していけば重度化を抑えられる」とし、自身が携わった事例を紹介。「重度化予防ケアを取り入れることで結果が見え、自分の専門性とやりがいが激増する。重度な人ほど可能性があると思って取り組んで」と話した。
介護職歴20年、43歳の男性スタッフは「初日から、当たり前にやってきた介助方法を改善できて驚いた。たくさんの学びと発見がありそう」。同25年、53歳の女性スタッフは「自分も利用者さんも身体的に楽な方法などを学べることへの期待感が大きい」と声を弾ませた。
研修は計20回の計画。月1回、2日間に分けて職員の半数ずつが交代で受講する。具体的には、寝たきりや車椅子での不良姿勢が原因の拘縮(こうしゅく)や円背(えんぱい)、褥瘡(じょくそう)、摂食嚥下(えんげ)障害などの重度化の予防を学ぶとともに、現場での実践研修を行う。
記事・写真 中村英美
2025年8月30日号フロント



