top of page

花まんま

  • 4月19日
  • 読了時間: 2分

=1時間58分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で4月25日(金)から公開

(C)2025「花まんま」製作委員会

失われた家族の絆 紡ぐファンタジー

 早くに両親を亡くし、大阪の下町で2人きりで暮らす兄と妹。兄妹間には長い間封印してきた秘密があった…。「花まんま」は、直木賞を受賞した朱川湊人の短編集「花まんま」を原作に、失われた家族の絆を紡ぐファンタジー映画だ。


 両親が亡くなった後、高校を中退し町工場で働きながら俊樹(鈴木亮平)は、妹のフミ子(有村架純)を親代わりに守り続けてきた。フミ子の結婚が決まり安堵感と寂しさが入り交じり慌ただしく過ぎる日々。しかし結婚式の直前、フミ子が幼い頃に封印したはずの秘密が発覚する。


 「九十歳。何がめでたい」「そして、バトンは渡された」の前田哲監督が、原作に出合い映画化を熱望してから17年後に脚本が完成。原作小説は俊樹の回想スタイルで子ども時代の出来事がメインに書かれ、結婚式の前日で終わっている。映画化にあたって前田監督は、兄妹のその先の姿を見たいと、大きくアレンジされた脚本も見どころの一つだ。


 「兄貴は、ほんま損な役回りや」。ぼやきながらも、亡くなった父親との約束を守り、妹の面倒を見続けてきた俊樹。医者にヤクザなど、善人から極悪人までさまざまな役柄を演じてきた鈴木亮平が、大阪の下町育ちの口うるさい兄貴を人情味たっぷりに演じている。鈴木と有村の出身は共に兵庫、共演の鈴鹿央士は岡山、ファーストサマーウイカとオール阪神・巨人は大阪、キムラ緑子と六角精児も兵庫と、物語の舞台に合わせて関西出身の役者たちが脇を固めている。会話のテンポやノリの良さがなんとも心地よい。


 昭和の空気感をまとった短編集には「妖精」や「死者の霊魂」という摩訶不思議な題材が取り上げられている。ファンタジーでありながら、そこに描かれているのは家族への愛。愛する家族を奪われた苦しみと喪失感を、大切な記憶が埋めていく姿に涙せずにいられない。


 映画の脚本からヒントを得たという朱川湊人が、四つの物語を収めた小説集「花のたましい」を新たに書き下ろしたという。映画とのコラボも面白い。

 (日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年4月19日号掲載

 © weekly-nagano  All rights reserved.

bottom of page