121 黒姫山

想定外の雪と泥道に難儀

山頂近くから見下ろす野尻湖。斑尾山の麓に黒姫山の影が映る

 長野市の飯縄山などが初冠雪となった10月下旬の日曜日、元の会社の先輩を案内して信濃町の黒姫山(2053メートル)に登った。

 10月に喜寿を迎えた先輩は、「信濃富士」とも呼ばれる端正な姿と、城主の娘が大蛇に嫁いだ黒姫伝説に引かれ、以前からこの山に登りたかったという。

 今夏、私が出版した「中高年の山ある記」を贈呈したのが縁となり、元同僚にも声を掛け、先輩の念願を果たすことになった。ただし登山経験はほとんどなく、昨年初めて飯縄山に登っただけという。

 7時過ぎに家を出て途中で先輩を乗せ、バードラインの一の鳥居駐車場で元同僚らと合流。1台の車に4人が乗って、戸隠キャンプ場の先の西登山道駐車場へ向かう。

麓の古池に姿を映す黒姫山

 好天に恵まれ紅葉シーズンの日曜日とあって既に満杯。何とか1台置けるスペースを見つけ、県道を西新道登山口まで歩く。

 9時前に登山口を出発。カラマツ林の中を進むと、間もなく種池の入り口に。その先に堰堤で囲まれた大きな古池が。水面にどっしりとした黒姫山の姿が映る。案の定、上部は雪化粧している。この日の雪は想定外だった。

 大休止した後、池の周囲の木道を進む。途中の分岐を行き過ぎてしまい、また戻る。少し登るときれいな沢に。丸太橋を渡る。ブナやミズナラの林の中を登って行くと、西登山道と交差する新道分岐に。

 一休みした後、右折して再び西新道を上る。道路脇に雪が現れ始めた。ほどなく「しなの木」の看板を付けた大木のある広地に。この先から急登が始まる。

 雪は次第に多くなり、日差しと登山者に踏まれて解け、登山道はぐちゃぐちゃの泥道になる。至る所に水たまりができ、靴やズボンの裾は跳ねてたちまち泥だらけに。

 木の下を通ると、上からも雨のように水が落ちてくる。葉の上に積もった雪が解け、首筋に当たるとひやっとする。路上にはネマガリダケが雪の重みで倒れ込んで歩きにくい。

雪に覆われた山頂と祠

 難儀しながら岩石が露出している「しらたま平」を過ぎると、左手に「小黒姫山」とも呼ぶ中央火口丘の御巣鷹山(2046メートル)が見えてくる。

 そこから山頂までは火口の縁を行く稜線歩きだ。南側は展望が開け、信濃町や飯綱町の平が一望できる。西側には飯縄山や戸隠連峰の大きな姿が。

 1998メートルピークを上り下りして、最後の急坂を詰めると山頂だ。休憩を多くとり、泥道に足を取られたため到着したのは14時少し前。石の祠(ほこら)の脇で急いで昼食を取り、早々に下山に入る。

 泥道の下りは上りより大変だ。足を滑らせ、全員が2、3度転倒。帰りは新道分岐から西登山道へ。幸い西日が差していたため、真っ暗になる前に無事下山できた。 

 横内房寿


2021年11月13日号掲載