120 鷲ケ峰 八島ケ原
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120 鷲ケ峰 八島ケ原

山は霧 湿原には秋の花

霧で視界不良の鷲ケ峰山頂

 台風14号が東海沖を通過した9月中旬の土曜日、スタッフを務めるカルチャーセンター「里山講座」の会員たちと霧ケ峰の北西端にある鷲ケ峰(1798メートル)に登り、麓の八島ケ原湿原を周遊した。

 手軽に登れ、眺望のよいことで近年人気の鷲ケ峰は、諏訪湖の西岸から見ると、稜線が羽を広げたワシのように見えるのが山名の由来という。

 この日は天気予報で朝からの雨を覚悟していたが、幸い曇り空で降られても霧雨程度。午前中に登った鷲ケ峰は霧で視界不良だったが、昼過ぎからは晴れ、八島ケ原では秋の花々を楽しんだ。

山腹にはトリカブトの群生が

 7時に長野駅東口を大型バスで出発。コロナ禍で密を避けるため、座席は1人1シートでゆったり。上信越道を坂城インターで降り、上田市の塩田平から平井寺トンネルを抜け、和田峠へ向かう。

 当初は和田峠から鷲ケ峰に登り、八島ケ原へ下る予定だった。だが、霧で登山口が分かりにくかったのと、時間短縮のため八島ケ原側から山頂を往復することにした。

 ビジターセンター前の駐車場でバスを降り、ビーナスラインの下をくぐって湿原手前の広場に。ここから北側の鷲ケ峰を目指す。

 程なく八島ケ原湿原との分岐に差し掛かる。直進し、石ゴロで歩きにくい急な斜面を登る。登山道は雨にぬれたササやカヤ類で覆われ、突然吹く台風余波の強い風で帽子が飛ばされそうになる。

 うっとうしい上りで慰めになったのは、目の覚めるような薄紺色のトリカブトの花だ。ほかの花はまったく見かけないのに、山腹の至る所に群生していた。 

 尾根道を登り詰め、石積みのケルンのある東峰を過ぎる。少し下って一登りすると山頂の西峰だ。晴れていれば、諏訪湖や霧ケ峰を見下ろし、360度の展望が開けるという。

 方位盤には富士山や南・北・中央アルプス、浅間山、八ケ岳など周囲の山々の絵が描かれているが、濃い霧で何も見えない。

草もみじが始まっていた八島ケ原湿原

 早々に下山することにし、降りていくと霧が晴れ、八島ケ原湿原が全貌を現した。バスの中で昼食を取り、湿原巡りに出かける。

 この頃には天気も回復し、青空が広がってきた。右回りに木道を進む。アキノキリンソウやオミナエシの黄、サラシナショウマやヤマハハコの白、赤みを帯びたヤマラッキョウやタムラソウ、紫がかったノコンギクなど、色とりどりの秋の花を観察できた。

 鎌倉時代に流鏑馬が行われたという御射山(みさやま)史跡の近くからは、先ほど登った鷲ケ峰の姿がくっきり。今山頂なら、さぞ景色もいいだろうにと思ったが、後の祭り。

 帰路は長和町の道の駅「マルメロの駅ながと」内にある温泉に立ち寄り、県民割クーポン券で土産を買って長野に戻った。










横内房寿


2021年10月9日号掲載

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