車乗り継ぎ三つの滝へ
天候不順や諸事情が重なり、この夏は山へ行けない日が続いた。ようやく9月中旬、山仲間の誘いで乗鞍高原の滝巡りに出かけることができた。
乗鞍岳の東斜面に広がる乗鞍高原は滝や池が点在し、遊歩道も多くトレッキングに最適だ。中でも、溶岩台地から流れ落ちる三つの滝は一見に値する。
7時に長野市内を出発。長野道を松本インターで降り、国道158号を上高地方面へ。奈川渡ダムを過ぎ、トンネルとトンネルの間を左折し、県道乗鞍岳線で乗鞍高原に。
大滝前バス停向かいの駐車場に車を止め、まず番所(ばんどころ)大滝へ向かう。急な下り階段をジグザグに降りていくと、あずまや風の展望台に。
落差40メートル、幅15メートル。小大野川(こおおのがわ)の豊かな水が轟音を響かせて滝つぼに落ちている。三滝の中で最大の滝。水しぶきが展望台まで飛んでくる。
再び階段を上り、駐車場の脇から上流へ延びる遊歩道を歩く。木製の橋を渡り、対岸を少し上ると落差8メートルの小滝に。
その先には、両側の岩がドーム状にせり出した下に青い水をたたえた千間淵(せんげんぶち)が。奥の小さな滝から水が流れ込んでいる。周囲の岩壁は大水の際に削られたものと思われる。
橋を渡り対岸を上ると、県道沿いにある診療所の駐車場に。県道を下り、大滝の駐車場まで歩く。そこから車で、畳平へのシャトルバス発着場のある観光センター前を通過し、善五郎の滝入り口の駐車場へ。
県道を横切り、林の中の遊歩道を進むと、高台にある滝見台に。見下ろす善五郎の滝はやや小ぶりだが、周囲の緑に包まれ、上部には乗鞍岳の最高峰・剣ケ峰(3026メートル)が望める。
滝つぼへ下ると、落差21.5メートル、幅8メートルの堂々とした滝だ。その昔、地元の釣り名人・善五郎が大きなイワナに引き込まれて見つけたと伝わる。修復中の橋を渡り、対岸に行くと水しぶきが全身に降りかかる。
その先の牛留池(うしどめいけ)では、水面に映る「逆さ剣ケ峰」の姿が。
近くの国民休暇村の前に出て、県道を善五郎の滝入り口駐車場まで歩く。昼食を取った後、再び車で三本滝レストハウス前へ向かう。ここまでは一般車の乗り入れが可能だ。
広い駐車場から、薄暗い林の中を下る。小大野川に架かる橋を渡り、少し上ると水音が大きくなり「日本の滝百選」の三本滝に。
向かって右に、支流の黒い沢の岩盤をレースのように滑り落ちる落差30メートルの滑滝(なめたき)。正面には、本流から一直線に流下する落差25メートルの一本滝。左手には、無名の沢から落ちる水量の少ない滝も見える。
それぞれ趣が異なり、水源も違う滝が集まる光景は見事だ。足場が悪いため、3本とも写る写真は撮りにくい。
滝巡りの後は、日帰り入浴の「湯けむり館」で乳白色の温泉につかり、来た道と同じルートで長野に戻った。
横内房寿
2021年10月2日号掲載