118 焼額山

山頂の神秘な池を訪ねて

山頂にひっそりとたたずむ稚児池

 うっとうしかった梅雨が明ける直前の7月中旬、志賀高原の焼額山(2009メートル)に登った。10年以上前に訪れた時の、山頂にひっそりとたたずむ稚児池の神秘的な風景が目に焼き付いていた。

 今回は長野県カルチャーセンターの「里山講座」で会員を案内するための下見。講師のNさんと2人で、8時に長野市内を出発。千曲川の立ケ花橋を渡り、中野市内に。山ノ内町に入り、まず下山先の竜王スキーパークに向かう。ロープウエーの運行状況を確認した後、志賀高原を進み、奥志賀のプリンスホテル西館前の駐車場に車を置く。

 200メートルほど先の登山口から、10時過ぎに南登山道を登り始める。最初は樹林の中だ。両脇にはネマガリダケが密生しているが、登山道は刈り払われている。

 樹林帯を抜けゲレンデに入ると、一面黄色のお花畑。サワギクやニガナとみられる花で埋め尽くされている。東側には雑魚川の谷を挟んで岩菅山が。南側には一の瀬や高天ケ原のスキー場が見下ろせる。

ゲレンデから見下ろす一の瀬、高天ケ原のスキー場

 ほとんど直登状態のゲレンデ道を登って行くと、上から中年の夫婦が下りてきた。山頂までの時間を尋ねると、夫人が「ひょっとして週刊長野に山の連載を書いている方? いつも楽しく読んでいます」とおっしゃる。

 驚いて「どうして分かったんですか」と聞くと、首から提げていたデジカメのひもに私の出身の「信濃毎日新聞」の社名が記されていたことから、「そんな気がしたの」と言う。

 世の中には勘のいい人がいるものだ。もっとも、平日の昼日中にこの山に登りに来るのは、われわれぐらいかとも思った。

 ゲレンデを登り詰め、スキーリフトの終点駅舎を過ぎると、道は木道に。間もなく右手に真新しい鳥居が現れ、山頂部へ。目の前に広がる稚児池は、澄んだ水面に周囲の木々を映し出している。

稚児池のほとりで、白い綿毛を付けたワタスゲ

 背後には湿原が広がる。苗場山の山頂部や尾瀬ケ原の一角のような光景だ。景色を楽しみながら昼食を取っていると、ガスが湧いてきて周囲が見えなくなった。降られないうちに下ることにする。

 帰路は竜王コースを行くNさんと別れ、一人で南登山道を下る。上るときは黄一色と思ったゲレンデには、ハナウド、ウツボグサ、フジバカマなどさまざまな花が咲いている。コバイケイソウに早くもアサギマダラが止まっているのも見た。

 1時間ほどで下山し、車を竜王スキーパークへ回す。そこから私がロープウエーに乗り、山頂駅のソラテラスで落ち合う手はずだった。

 山麓駅に着いて上部にいるNさんに電話をすると「ガスで何も見えない」と言う。それでは往復2500円の料金が無駄になると判断。ロープウエーで下ってくるNさんを山麓駅で待つことにした。

 合流した後、長野電鉄湯田中駅併設の温泉に立ち寄って帰宅した。

(横前公行)











2021年8月7日号掲載