草の茎に巣を修復 失敗繰り返さぬよう
台風が最も多くやってくる今の時期、人間以上に翻弄(ほんろう)されるのが「虫」です。強い雨や風によって、家である「巣」が壊されてしまうこともあります。
もし巣がなくなってしまったら、虫はどのような行動を取るのでしょうか。巣を丁寧に修復した「アシナガバチ」の記録がありますので紹介します。
それは台風の翌日のことでした。あるカメラマンが、軒下にあったはずの巣が草の上に落ちているのを見つけました。観察していると、まず、たくさんの働きバチが巣から草の上へ降りてきました。そして、大きな顎をカマのように使い、巣の周りの草を刈り始めたそうです。刈り取った草は遠くまで捨てに行き、わずか半日足らずで生い茂っていた草を刈り取ってしまいました。
続いて、そばにあった枯れ草の茎に巣を固定し始めたそうです。今度は飛ばされないように、以前よりも頑丈に茎につなげ、修復を終わらせました。失敗を繰り返さないように、学習していることに驚きますね。
私たち人間も、過去の苦い経験を次への防災につなげています。
今広がってきているのが、大雨などで災害が発生しそうな時に、いつどこへ避難すればよいのか、「自分なりの目安」を持っておこうという考え方です。避難行動をスタートするという意味で「避難スイッチ」と呼ばれています。
例えば、大雨によって隣の田んぼが水につかり始めたら避難しよう、川にある大きな岩が水で隠れたら避難しよう、など、ルールを決めておくことで、もしもの時にスムーズに避難することができるようになります。
地域住民で共有されている「避難スイッチ」があったことで、自治体から避難指示が出る前に避難して助かった事例もあります。
もしもは明日かもしれません。前もって、家族や近所の人たちと避難方法について話し合っておくことが大切だと思います。
気象予報士・防災士
2023年9月30日号掲載
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