語源たどり 親しみのある詩に
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語源たどり 親しみのある詩に

戸隠栃原の和田攻さん

詩集を手にする和田さん
「詩集 信州方言辞典」出版

 戸隠栃原の詩人、和田攻(こう、本名おさむ)さん(81)が、信州の方言を語源からたどり、詩につづった「詩集 信州方言辞典」を出版した。

 3章で構成。第1章で信州の方言を使った37編の詩をつづっている。広辞苑にも紹介され、全国的にも知られる「ずく」のほか、「たあくらたあ」や「もーらしい」などの方言を、年輩の祖父母や両親などが語りかけるような日常会話調の詩にした。素朴で親しみのある詩で、方言を未来に残したいとの思いも込めた。

 悔しくて腹が立つといった意味の「ごーさわく」は、「業が沸く」(腹が立つ)に〝さ〟を加えて強調したもの、疲れたなどを意味する「ごしてー」は、「ごし(腰)がいてえ(痛い)」が変化したもの―と、それぞれの語源の推測を交えたユニークな詩が並んでいる。「生活の中で、何げなく使っていたり、近所の『先輩』から耳にしたりしたものを選んだ」とし、アイデアが浮かんでもさらに表現を広げようと推敲(すいこう)を重ねた。

 2章では、ここ数年相次いで経験した手術や病気になった心境、詩の創作の原点の一つとなった反戦や平和の尊さについて「憲法九条」などを題材に、一転して力強く表現。3章では日々の生活で感じたことを詩にした。

 東京で生まれてすぐ、長野市に疎開、小学校4年で父親の故郷の柵村(現長野市戸隠)に移住した。高校卒業後に旧国鉄に就職し、JRを定年退職するまで運転士を務めた。20代の頃、体を使って石炭をたいて走らせていた機関車から電車になったことを機に、働く意味を問うようになり、国鉄詩人連盟で労働者の心境を詩にしてきた。

 定年退職後に小規模ながら始めた農業との生活をつづり、長野県詩人賞を受賞した前作「ミニファーマー」から18年。新著は4作目の詩集になる。農業をしながら、詩人として地域を盛り上げようとした意気込みも消えかけていた時、方言の響きの魅力に気付いたのが出版のきっかけ。約3年で書き上げた。「この土地で生まれた言葉(方言)の響きには、この土地で育った味わいがある。よく詩に方言を使っていたが、方言そのものに焦点を当て、起源をたどったら面白いと思った。方言は日常。『辞典』としたが、会話形式にした」。本作を全国の知人に送ると、「私の地域でもこの言葉を使う」との礼状が届き、方言の面白さを再認識したという。

 県詩人協会の前会長で、現在も同会の選考委員として、詩人の育成に努めている。「決まりごとはないので、思ったことを気軽に詩にしてみてほしい」と、詩の魅力を話す。創作の傍ら、3千平方メートルほどの畑で、出没するサルと格闘しながら出荷用のミニトマトやキウイなどの栽培を楽しんでいる。

 A5判、141ページ。2200円

 (問)土曜美術社出版販売☎︎03・5229・0730

 記事・写真 斉藤茂明


2024年4月13日フロント


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