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句を比べて違いを楽しんで

一茶記念館、人工知能(AI)で俳句を生成

AI一茶くんの使い方を説明する渡辺さん

 信濃町の一茶記念館が、人工知能(AI)で俳句を生成する「AI一茶くん」の展示コーナーを設けた。同町出身の江戸時代の俳人・小林一茶の俳句を広く伝えたいと、開発した北海道大学調和系工学研究室の協力を得た。

 AI一茶くんがこれまでに生成した1億2千万句以上を検索できるパソコン1台のほか、AI一茶くんの紹介や使い方、AIと小林一茶の句の違いや共通点を伝えるパネル3枚がある。

 AI一茶くんは、一茶が詠んだ約2万句に加えて、インターネット上の約40万句と著作権が切れた文学作品を掲載する「青空文庫」の日本語情報2億文字以上を学習。季語や地名などの単語を入力すると、自然な言葉や俳句らしい言葉の並びになっている確率などとともに俳句が表示される。


 

AI一茶くんvs 小林一茶

発想の類似

どつさりと居り込たる蛙哉小林一茶

大の字に寝てしまひたる蛙哉AI一茶くん

涼風や力一ぱいきりぎりす小林一茶

夏山や力を抜きてきりぎりすAI一茶くん

(パネル展示より)

 

進化するAI一茶くんの俳句

かおじまいつきとにげるねばなななな(2017年)

宙吊りの東京の空春の暮(2020年)

シャガールの恋の始まる夏帽子(2022年)

(パネル展示より)

 

 人生の節目に感じたことや体験した心の動きを優れた観察力で詠んだ「境涯句(きょうがいく)」は一茶(人間)の魅力。AIは「考える」ことをせず、さまざまな「確率」をもとに生成するため、人間では思いつかないような斬新な句を作るのが特徴だ。学習データの増加や生成プロセスの進歩で、最近では人間の発想に似た句も多くなっているという。

 AI一茶くんは、同研究室が、人間社会とAIの調和を目指した研究の一環として、2017年から開発に着手。人とのコミュニケーションにおいて、AIがどこまで精度を高められるか、「五七五」17文字の短い「文芸・芸術」の俳句に着目して研究を進めてきた。

 学芸員の渡辺洋さんは、「一茶の素晴らしい俳句を記念館としてもっと発信することが課題だった。AI一茶くんがその入り口になればうれしい。人間が詠んだ句とAIが生成する句を比べて違いを楽しんでほしい」と話している。

 今年の休館日は5月31日(金)、7月1日(月)、9月30日(月)、10月31日(木)。開館は9時から17時。高校生以上500円、小中学生300円

 (問)一茶記念館(電)255・3741

 記事・写真 斉藤茂明


2024年4月27日フロント


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