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水問題解決に挑む「信大クリスタル」

  • 2025年12月20日
  • 読了時間: 3分

信大ARG機構長の手嶋さん講演

スライドを映しながら講演す
スライドを映しながら講演す
「その土地」の個性生かした水つくる 世界の水問題まで幅広く

 水の浄化など水分野の研究を推進する「信州大学アクア・リジェネレーション(ARG)機構」(松本市)機構長で卓越教授の手嶋勝弥さん(53)=若里=はこのほど、門前町の飲食店「門前茶寮弥生座」が主宰する第197回「座の会」で、「水問題解決に挑む信大クリスタル〜地球が育む鉱物・宝石に学ぶ」のテーマで講演した。


 手嶋さんの研究室でフラックス法という技術で作る高品質な結晶材料「信大クリスタル」。浄水器から世界の水問題までさまざまに実用化されている。その一つが、水中に含まれる鉛やカドミウムなどの有害な重金属イオンを吸着除去する、手嶋さんらが「ナティオ」と呼ぶ結晶だ。水中のミネラル成分は残して、要らない重金属のみを除去してくれるのが大きな特徴。ミネラル成分まで取り除いてしまう浄水器とは違い、「その土地」の個性を生かした水をつくることができる。


 2018年に初めて社会実装の第一号として「携帯型浄水ボトル」を実用化。以降、さまざまなタイプの家庭用浄水器に搭載され、日本酒やビールなど酒造りの現場に導入されるなど全国に普及し、活用されている。




 21年には、信大クリスタルを搭載した浄水器を県内の公共施設などに置き、浄化した水道水を無償提供するアクアスポットの整備を開始。県内の自治体などの協力を得て各地に広がり、設置箇所は50カ所を超えるまでになった。


 また、手嶋さんは、国連による持続可能な開発目標(SDGs)にふれた。「25年版の最新レポートは『SDGsは破綻、もう目標は実現できない』ときわめて衝撃的な内容となっている」。さらに科学の分野で用いられる、地球が自分の力で元に戻れるかの境界という意味の「プラネタリーバウンダリー」のレポートもまた既に限界を超え、『回復できない』ことを示している」と明らかにした。


 そのうえで世界の水問題にふれ、タンザニアのマサイの人々が暮らす村で自身が取り組むプロジェクトに言及。フッ素を高濃度に含む水で健康被害が出ていることから、23年、ここに重金属を除去できる小型浄水プラントを設置。この地初の水道を作って今年2年の実証試験期間を問題なく終え、改めてプラントを設置することを紹介した。


 「私たちがこうしてしまった環境を子どもたちにそのまま残してはいけないと強く思う。その地その地に応じた結晶を作って、世界中の人々がいつでも安全な水を手に入れられるようにしたい。今止まっている場合ではなく、とにかくアクションを起こすことが大事。そしてその仲間を広げたいという強い思いで活動している」と結んだ。


記事・写真 中村英美


2025年12月20日号フロント


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