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前向きに 挑戦する姿勢 自叙伝に

  • 5月17日
  • 読了時間: 3分

電動車いすで生活 堀内宗善さん

トップキャプスを製作した3Dプリンターの前に座る堀内さん
トップキャプスを製作した3Dプリンターの前に座る堀内さん
特許取得し創業の準備しながら 最新テクノロジー駆使し執筆中

 バイク事故で四肢まひとなり、電動車いすで生活する堀内宗善さん(45)=三輪=が、自叙伝の出版に向けて準備を進めている。人差し指を伸ばしてテープで固定し、スマートフォンを使って文字を入力。事故の状況や、約1年半の入院生活、リハビリ、退院後の様子などを、病院の診断書などから詳細に追っている。自由に体が動かない絶望感、周囲に迷惑をかけている負い目が、人との出会いや最新技術で、前向きに変わる様子、創業への思いなどをつづっている。


 執筆のきっかけは、長野商工会議所の押金明人さん(65)との出会い。昨年6月、堀内さんが考案した、瓶や調味料のボトルの内容を書いたふたをはり、簡単に中身を識別できるキャップ「Top CapS(トップキャプス)」で特許申請中に、創業相談で同会議所を訪れた。1人で大きな電動車いすに乗って現れた堀内さんに押金さんが対応した。「しっかりした事業計画書に驚いたが、それ以上に死に直面したことのある人が、前向きに生きる姿に感動」し、自伝執筆を強く勧めた。


 堀内さんは、長野工業高校建築科を卒業。東京の中央工学校に進学し、最優秀技術賞を受賞したこともある。設計事務所などで働き、2002年、都内の国道をバイクで走行中に車と衝突した。心肺停止のまま、都立広尾病院(渋谷区)に搬送され、「第一、第二頸椎の骨折」「頭蓋骨環椎脱臼」「脳挫傷」と診断。長野から駆け付けた両親は医師から「死」の宣告を受けた。集中治療室で約1カ月治療を受け、奇跡的に一命を取り留めたが、頸髄損傷で、首から下で動かせるのは左肩と右腕のみという障害が残った。


 半年後の8月、長野市の厚生連篠ノ井病院に移り、翌年1月には、下駒沢の県身体障害者リハビリテーションセンター(現・県総合リハビリテーションセンター)に。懸命なリハビリで回復に努め、自分でできることが増えると自信と希望が芽生えた。8月には自宅に戻った。


 20年から市内で一人暮らし。調理や入浴などでヘルパーの助けを受けるほかは、立ち姿勢などがとれる電動車いす、ネットにつながり、スマートフォンや声で操作する40種類以上の「スマート家電」を使いこなし、自分らしい生活を送っている。本には、挑戦する姿勢や、周りの人を頼り、巻き込む力の必要性なども挙げ、障害者が街に出て、社会と関わることを勧めている。


 トップキャプスは今年4月、特許を取得した。創業準備をしながら支えてくれた人への感謝、障害への理解を深められるように、完成に向けて執筆する。「特に、事故から一人暮らしまでの18年間は両親の献身のおかげ」と思いを込める。


 出版資金は、クラウドファンディングなどで募りたいとしている。

 記事・写真 斉藤茂明


2025年5月17日号フロント

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