41 反転効果 「得」の状況ではより安全に
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41 反転効果 「得」の状況ではより安全に

追い込まれて破れかぶれになり、イチかバチかの賭けをする「最終レース効果」の心理を前回、解説しました。

 人は損している状態に冷静でいられず挽回に向けて賭けに出ます。

 では、得している状態なら冷静に判断できるのかというと、そうでもありません。人は得をしているとリスクを避け、過剰に安全を求めます。現状が損か得かによって、次に取る行動が正反対になります。この傾向を「反転効果」と呼びます。

 ここで質問を二つします。AとBのどちらかを選んでください。質問(1)「A:確実に9万円もらえる」「B:90%の確率で10万円もらえる。10%の確率で何ももらえない」。質問(2)「A:確実に9万円を失う」「B:90%の確率で10万円を失う。10%の確率で何も失わない」。

 質問(1)の回答はAが多数になります。多くの人が「高い確率で10万円もらえるのは魅力だが、何ももらえない可能性が少しでもあるなら、確実に9万円もらえる方にしよう」と考えるためです。得をする状況ではより安全な策を選ぶのです。ところが質問(2)ではBが多くなります。「確実に9万円損をする」のなら、可能性は低くても「何も失わない」賭けに出るためです。

 さて昨今、コロナ禍のステイホームを機に投資を始める人が増えています。実は、投資は反転効果に影響されやすいので要注意です。例えば買った株が値上がりしたとします。上がり続ける可能性があるなら、売る時期は慎重に判断すべきです。しかし得をしていると思うと、早く売って利益を確定したくなります。反対に買った株が下がると、持ち続けようと考えがちです。値が買い値に戻る可能性に賭けるのです。そして売り時を逃し、損がどんどん膨らんでいく結果に陥ります。

 つまり反転効果の影響を受けると、得する時は少額に、損する時は多額になる可能性が高くなります。利益を得た回数が損失の回数を上回ったのに、結果的に損失額が出たということにもなりかねません。

 頻繁に損得を確認して一喜一憂するのは危険です。反転効果の人間心理を考えれば、あえて確認しすぎないやり方で投資に臨む手法にも一理あります。

マーケティングコンサルタント


2021年5月15日号掲載

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