36 代表性ヒューリスティック 「ありそう...」で判断ミス
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36 代表性ヒューリスティック 「ありそう...」で判断ミス

にぎわう大型スーパーで探している商品がどうしても見つからないとき、店員に売り場や棚を教えてもらうのが早道です。

 そんな状況で、エプロンや白い帽子などの格好から尋ねた人が来店客だったという、気まずい経験をしたことはありませんか。

 こうした間違いの原因は、尋ねた人を店員だと思い込んだことです。しかし、にぎわうスーパーにいる、たくさんの人の中では、店員の人数は少ないはずです。従って、見つけた人が店員である確率は、そもそも小さいものです。このような根本的な確率を「基準率」と呼びます。

 エプロンと白い帽子を根拠に直感的な判断をする際に、基準率を念頭に、慎重に判断する必要があったのです。この例のように、論理的な確率ではなく、「ありそうな『ステレオタイプ』にどれだけ近いか」にとらわれて偏った判断をしてしまうのは、代表性ヒューリスティック(ヒューリスティック=人間の直観的判断)の影響です。

 基準率を無視すると、判断ミスを起こします。例えば、「会社の社長まで出世した人は長男が多い」という統計があったとしましょう。では次男は社長になるのを諦める方がよいのでしょうか。あるいは長男であれば、チャンスが大きいと考えてよいのでしょうか。ここで「この統計をうのみにしてはいけない」と思った方は、基準率の考え方を理解しています。

 この統計の結果に納得する前に、まず長男と次男の人数的な割合を考えなければいけません。日本の出生率は1970年代半ば以降2・0を、1990年代半ば以降1・5を割っています。男の子が2人以上いる家庭でなければ、そもそも次男は存在しません。次男の人数が少なければ、社長になる次男が少ないのも当然です。もし、この基準率を忘れると、長男の方が出世するものと勘違いしてしまうかもしれません。

 数字によって、たやすく人はだまされるものです。今はニュースなどで統計や調査にふれる機会が多くあります。目の前の数字だけを見て判断しないよう注意することが必要です。

(マーケティングコンサルタント)


(2021年4月3日号掲載)

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