35 連言錯誤 「もっともらしさ」から混同
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35 連言錯誤 「もっともらしさ」から混同

SNSは今や生活には不可欠です。主な使い方は知人同士のコミュニケーションですが、2017年の流行語大賞にもなった「インスタ映え」のような使い方も人気です。

 これは写真や動画を投稿する「Instagram」で、見栄えの良い写真と投稿によって自分のページが「映える」ことです。自分の印象を良くする行動です。

 そもそも人の印象はたやすく変わるものです。行動経済学でも、他人の印象を見誤る現象の研究が行われています。その一つが、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授らによる「リンダ問題」という実験です。

 まず「リンダ」の人物像が紹介されます。「31歳、独身、率直な性格で、とても聡明。大学では哲学を専攻。学生時代には、差別や社会正義といった問題に深く関心を持ち、反核デモにも参加したこともある」というものです。

 次にリンダの現在の姿を予想し、どちらの可能性が高いか質問します。(1)は「リンダは銀行の窓口係である」、(2)は「リンダは銀行の窓口係で、フェミニスト運動に参加している」です。実験では(2)と答える人が大多数でした。正解は(1)です。なぜならば(2)の人は、(1)に含まれる多数の人の中の一部であり可能性は低くなるからです。

 このように二つの事柄が同時に発生する(銀行員かつフェミニスト活動家)確率を、単一(銀行員)が発生する確率より高いと判断する錯誤を「連言(れんげん)錯誤」といいます。

 (2)である確率を高く感じてしまうのは、つじつまの合う人物ストーリー(学生時代の活動の延長でフェミニスト活動家になった)があるからです。話の一貫性からくる「もっともらしさ」と、「起こりやすさ(確率の高さ)」を混同してしまうのです。

 これからの時代、リアルよりオンラインで人に会う機会が増えるでしょう。SNSでは、もっともらしい言葉や印象良く見せるストーリーが影響力を持ちます。印象と現実の間にギャップのある事象が増える可能性もあります。日常の生活の中で、印象が操作されている可能性を念頭に置いて行動することが、ニューノーマル(新しい生活様式)の一つになるかもしれません。

(マーケティングコンサルタント)


(2021年3月27日号掲載)

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