29 極端回避性 松竹梅の竹を選ぶのは...

最近は企業がインターネットでアンケート調査を行うケースが増えました。

 皆さんも回答者になった経験があるかもしれません。実はここで調査をする側が必ず悩む点があります。

 「テレワークを導入するべきだと思いますか?」という調査をすると仮定します。基本的な手法は、米国の心理学者によるリッカート尺度に基づく五つの選択肢「(1)非常にそう思う」「(2)ややそう思う」「(3)どちらともいえない」「(4)あまりそう思わない」「(5)全くそう思わない」となります。しかし、ここで「(3)どちらともいえない」を選択肢に入れるべきか悩むのです。

 これを省いて四つの選択肢にすると、テレワークに賛成か反対か、明快な結果が出やすくなります。この場合、どちらとも決められない回答者は迷った末にどちらかを選ばざるを得ません。

 「(3)どちらともいえない」を選択肢に入れると、これを選ぶ人が多くなる結果が想定されます。回答者の大多数が中間を選択した場合、テレワークを導入すべきか否かを結論づけられないということになりかねません。

 人は複数から一つを選ぶ場合に、極端な選択を避けて中間を選ぶ傾向があります。これは「極端回避性」の影響です。松竹梅の3段階があると、真ん中の竹を選ぶのが典型例です。

 行動経済学者のエイモス・トベルスキーらはカメラ購入の実験で、この心理を明らかにしました。まず機能の低い1万7000円のカメラと、機能が高い2万4000円のカメラのどちらかを選んでもらった結果、ほぼ50%ずつに分かれました。ところが、さらに機能の高い4万7000円のカメラを選択肢に加えると、57%が中間の2万4000円のカメラを選んだのです。残りは、22%が1万7000円を、21%が4万7000円を選びました。

 このように中間の選択肢があるかどうかで、人の判断は大きく変わります。こうした人間の心理を当てにしてなのか、小売店舗や飲食店などで商品のラインナップを値段別に3種類用意するケースをよく目にします。

 選ぶ際には松竹梅の竹と安易に決めるのではなく、必要性やコスパをよく考えて判断することが大切ですね。

(マーケティングコンサルタント)


(2021年2月6日号掲載)