25 プライミング効果 語源は「前もって教え込む」
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25 プライミング効果 語源は「前もって教え込む」

あなたは自分の性格を把握していますか?

 民間の会社が全国の20~49歳の男女1000人を対象に行った「自分自身の性格・性質に関する調査」によると、自分自身の性格を客観的に捉えていると答えた人は36%、捉えていないと答えた人は14%、50%は分からないと答えました。多くの人は自分自身の性格が分からず不安定なまま日々暮らしています。そうだと他人に対する態度も安定しません。

 ニューヨーク大学のジョン・バルフ教授らは、他人に対する人間の態度が一定ではないことを示す調査を行っています。まず被験者は複数の単語を使って文章を作ります。初めのグループは「強引、大胆、困らせる、妨げる」など無礼な意味の単語を、もう一方は「思いやりのある、感謝する、我慢強く、礼儀正しい」といった丁寧な意味の単語を使います。

 この後、被験者は、別の部屋に行って次の実験担当者と話すよう指示されます。この担当者は故意に、別の会話で忙しくて対応できないような態度を見せるのです。すると無礼な単語で文章を作った被験者は、平均5分程度で担当者の話をさえぎりました。ところがもう一方の、丁寧な意味の単語で文章を作った被験者の82%は、10分たってもさえぎらなかったのです。

 これは「プライミング効果」の影響です。この語源である英語のprimeという動詞には「前もって教え込む」という意味があります。先に受けた刺激は記憶に残り、後の刺激への対応に影響するのです。

 身近な例もあります。子どもの頃、「『ピザ』と10回言ってみて」の後に、ひじを指さして「これなあに?」と聞いたことはありませんか? ここで「ひざ!」と答えてしまうのはプライミング効果の影響です。

 重要な場面でもプライミング効果は影響しかねません。例えば入社試験の試験官が、当日の朝、派手な夫婦げんかをしたならば...。意地悪な性格になってしまった試験官による面接は受けたくないですよね。

 あなた自身が仕事で人に会う前に不快な出来事に遭う可能性もあります。プライミング効果の影響で態度や性格が悪いと思われたら、商談もうまく進みません。

 これからのビジネスマナーは、自分自身の「無意識」にまで気を付けるべきなのかもしれません。

(マーケティングコンサルタント)


(2021年1月9日号掲載)

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