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22 あぶく銭効果 ~幸運の大金を無駄遣い

「『その日』から読む本」を知っていますか? これは宝くじで1千万円以上の高額当せんした人に無料で配布されている小冊子です。

 世の中には、せっかく宝くじに当たったのに当せん金を浪費してしまい、破産、詐欺被害、財産争いなどの問題を抱える人が多くいるのです。

 運良く手に入れた高額のお金をうまく扱えないケースは「あぶく銭効果」が影響しています。これは、人が宝くじやギャンブルなどで得た幸運の大金を大切にできず、無駄遣いしてしまう心理です。ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授らは実験で、この心理を検証しました。

 まずグループ(1)に、AかBか、望む方を選んでもらいます。Aは「30ドルをもらえる」、Bは「50%の確率で39ドルをもらえて、50%の確率で21ドルもらえる」です。結果は57%の人がA、43%の人がBを選びました。次に別のグループ(2)に「選択前に30ドルもらった」という仮定の下で選んでもらいます。Aは「賭けをしない」、Bは「50%の確率で9ドルを手に入れ、50%の確率で9ドル失う」です。この結果、18%がA、82%がBを選びました。

 実は二つの質問において、Aは安全志向で共通し、Bはギャンブル志向で共通します。しかも両方の質問で、A同士、B同士は損得の額が同じなのです。それにもかかわらず後の質問では、Bを選ぶ人が8割以上にもなりました。これは回答者が選択の前に30ドルもらったため、9ドルくらい失ってもよいと思ったためです。同じお金なのに、なぜ捉え方が異なるのでしょう。

 あぶく銭を得たことを、自分の実力を超える幸運と認識するためだという説があります。分不相応なお金を手にして、きまりが悪くなり、雑に扱ってしまうのです。そう言われても、自分は宝くじも賭け事もやらないから関係ない、とは思わないでくださいね。遺産相続や仕事の臨時ボーナスなど、急に高額のお金を得る機会があるかもしれません。ぜひご注意を。

(マーケティングコンサルタント)


(2020年12月12日号掲載)

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