17 最後通牒ゲーム 利己主義者を罰する心理

主人公の銀行員半沢直樹が、不正を働く政治家や理不尽な銀行経営陣に正々堂々と立ち向かい、悪事を暴き、正義を貫く痛快な物語「半沢直樹」。

 高視聴率を稼いだこのテレビドラマの人気の理由はいくつかありますが、その一つに、たとえ自分に不利益が及ぶとしても不正を罰しようとする者(半沢直樹)への共感が挙げられるでしょう。

 この心理は、行動経済学者らが行った「最後通牒ゲーム」と呼ばれる実験で確認できます。

 お金を2人で分ける実験で、提案者のAさんが金額を決めて、受け手のBさんに提案します。例えば千円のお金があって、Aさんが自分に700円、Bさんに300円という提案をします。Bさんがその金額を受け入れた場合、提案通りに2人にお金が分配されますが、Bさんが拒否した場合、2人ともお金を受け取れません。

 合理的に考えれば受け手は1円以上ならもらった方が得です。ところが実験では、少額の提案を受け手が拒否するという結果が高い確率で出ました。人間は、自分が利益を得られないと分かっていても、提案を拒否することで、不公平な提案をした利己主義者を罰しようとすることが分かります。

 この心理は行動経済学や、文化人類学、社会学で用いられる「互酬性」によるものです。贈答、交換、相互扶助などにおける原則で、有形無形のものを受け取った側からは返礼があるという考え方です。

 互酬性には、互いのために良い行動をする「正の互酬性」もあれば、不利益を与える不正な行動には罰を与える「負の互酬性」もあります。

 ドラマのせりふ「倍返しだ!」は、この心理の表れと言えるでしょう。ただし現実の社会では、不正なのか、そうでないのかが見えにくいものです。不正を憎む気持ちが先走ると、コロナ禍での自粛警察のように、安易に人が人を罰する問題も起きます。何よりまず、不正を正しく見抜くことが大切です。


(2020年10月24日号掲載)