37 御開帳で作句
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37 御開帳で作句


 寺院で行われる「開帳」は春季に行われることが多いので、春の季語になっています。今年は善光寺さんの御開帳の年です。善光寺さんは7年目に一度ですが、昨年は実施されず、今年に延期されました。4月3日から6月29日までの開催期間中、感染が拡大せぬよう祈っています。


開帳に逢ふや雀も親子づれ   小林一茶


 江戸時代のお開帳詣でに、親子連れで出掛けている人間たち。そのあたりに遊んでいるスズメもまた、同じように親子連れだなと思って見ている一茶。一茶がスズメを見る視線は、常に優しいですね。


開帳の時は今なり南無阿弥陀   高浜虚子


 開帳は60年に一度という寺も存在します。そんな貴重な機会に巡り合わせたら、有り難さにおのずから「南無阿弥陀」と念仏を唱えるでしょう。


開帳の破れ鐘つくや深山寺   飯田蛇笏


 山深い所にある寺で、ゴーンと撞く鐘が破れ鐘だとは。いったいどんな音がしているのでしょうか。その場に行って聞いてみたくなります。


炎上をまぬがれたまひ出開帳   清原枴童


 仏様の在(ま)します寺にて行う開帳を「居開帳」といい、それに対して別の場所にて行う場合を「出開帳」といいます。長い歴史の中で炎上を免れた仏様は、そのことが有り難さにつながります。


半蔀を内側へ揚げお開帳   北野民夫


 扉の上部の格子をはね上げて開くようになっているしつらえが「(半蔀)(はじとみ)」です。日本ならではの寺の造りが目に見えてきます。


ちよんちよんとおじゆず頂戴出開帳  八木林之介


 前回の善光寺さんの御開帳の際には、私もこの「お数珠頂戴」を体験することができました。何とも豊かに、心洗われた気分です。

 開帳の例句は少ないので、今年はぜひ、善光寺さんでお作りください。


2022年2月19日掲載

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