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23 役場庁舎に飾る

  • 2024年12月21日
  • 読了時間: 3分

更新日:2024年12月23日

幼き日の思い出懐かしく 地域への貢献 私の誇り

大桑村役場で飾られている、夏の殿地区を描いた作品
大桑村役場で飾られている、夏の殿地区を描いた作品

 2021年春、新築された上松町役場庁舎に、1メートル×60センチほどの私の絵が飾られました。同町の上松電子からの寄付をもとに同町が検討した結果でした。


 その前年に上松電子社長の古畑明さんが「おぶせ藤岡牧夫美術館」を訪ねて来られました。面識はなく、「藤岡さんの好きなように絵を描いてください」と言われました。別の日に、上松町長も訪ねて来られ「藤岡さんの絵のファンです」と言われました。上松町は私が生まれた町なので喜んでお引き受けしました。


 私は、田植え前の田んぼの水面に木曽駒ケ岳が写る絵を描きました。タイトルは「オオヤマレンゲの町」。町花のオオヤマレンゲの小さな白い花と、ツバメの上に乗った小さな子どもを描きました。上松町の人たちには非常に喜んでもらえました。ただ珍しい光景だったからか「これはどこの池だい」と聞かれたこともありました。


 この仕事が実現したのは美術館のおかげだと思っています。やはり、個人名のついた美術館があるとイラストレーターとして箔が付きます。自分で営業しなくても、私の名前や作品が自然に知れ渡っていくのは本当にありがたいことです。


 その後、大桑村からも新築の村役場庁舎内に飾る絵を依頼されました。大桑村は小学校入学前から4年生まで住んでいたことがあり、幼少期の中では最も長い期間暮らした思い出深い場所です。「春夏秋冬で各1枚、合計4枚の絵を描いてほしい」という依頼でした。大桑村は須原、殿、野尻、長野という四地区があります。そこで各々の地区と季節を組み合わせて、春は須原、夏は殿、秋は野尻、冬は長野としました。サイズは春だけが1.5メートル×1メートルほど、ほかは910ミリ×727ミリです。


 4枚の絵の中で私が特に気に入っているのが、夏の殿地区の絵です。田んぼに木曽駒ケ岳や空が映り込み、その上を小さな子どもたちがゴム動力飛行機のおもちゃに乗って遊んでいる様子を描きました。


 私が子どもの頃、近所の駄菓子屋でゴム動力飛行機の組み立てキットを買いました。切った竹をあぶって曲げて骨組みを作り、そこに紙を貼って霧吹きでなじませて翼を作りました。2日かけてようやく作った飛行機を小学校のグラウンドで飛ばすと、思いの外よく飛び、見えない場所まで飛んでいきました。その飛行機は地面に落ちて翼が破れて飛べない状態になっていたのです。予備の紙はなく、飛ばしたのは結局一度だけ。大桑村での幼き日が懐かしく思い出されました。


 私は長野県の各地域に貢献できる仕事をしたいと思っています。そのため、上松町や大桑村のように公共施設に飾るための絵を描けたことは私の誇りです。

(聞き書き・広石健悟)


2024年12月21日号掲載

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