10 就職活動

校長に「店の紹介を」直談判 有名な実力美容師の店へ

美容学校の卒業ヘアショーで。 左から2番目が私

 国際文化理容美容専門学校に入学し、夢中になって学んでいるうちに冬になり、早くも就職活動の時期がやってきました。

 現在は美容学校で2年間学び、規定の課程を修了すれば国家試験が受けられます。しかし、私が通っていた当時は1年制で、国家試験の受験資格を得るには美容学校を卒業後、有資格者の下で1年間のインターン(実地習練)を修了することが必要でした。修了後はインターン先の美容室にそのまま就職するケースが大半なので、インターン先を探すことが実質的な就職活動でした。

 「必ず美容師として成功するぞ」という強い気持ちを持っていた私にとって、どの美容室で働くかは、夢の実現を左右する大切な選択となります。期待と不安のなか、就職活動が始まりました。

 初めて美容室で働いたのは、「サロン実習」という授業で学校から紹介された虎ノ門の店で、10日間の住み込みでした。20人の女性美容師がいました。皆さんは私に優しく接してくれたのですが、客のいないところでは、きついやり取りが飛び交っていました。田舎育ちの19歳の私は、それまで女性には優しく温かいイメージしかなかったので、女性だけの厳しい世界に接してすっかり萎縮してしまいました。

 「自分のインターン先は男性美容師の店の方がいい」。そう思い、学校の友達と2人で男性美容師の店を探し、六本木の美容室に面接に行きました。

 その店の美容師は、確かに全員が男性でした。しかし、話を聞いてみると、みなさんが「あら、やだわ」「〜でしょ」などと、女性がよく使う言葉で話し、しぐさや身のこなしまでも女性のような振る舞いでした。面接では「女性のお客さまは『男』を出すと嫌がるので、女性のような優しい態度で応対してほしい」と言われました。

 野球部で大声を出して練習し、荒れた時期もあった私だったので、「これは困ったな」と思いました。牟礼の方言が抜けず、標準語を使うことにも苦労していました。急に「あら、そうなの」など、話し方をがらっと変えることなどできません。

 戸惑いを隠せないままに面接は終了。不合格でしたが、納得の結果でした。

 二つの店での経験を通して自分が目指すべき美容室とはどんな店なのかがはっきりしました。それは、「確かな技術を持つ、男性美容師の下で働ける店」です。校長先生に、自分の希望に合う美容室を紹介してほしいと直談判に行きました。

 「ここは厳しいよ。それでも行きたいか」。校長先生がそう前置きして紹介してくれたのは、錦織光弘先生の店でした。錦織先生は都内で美容室を数店経営し、当時の美容専門誌で「日本の美容師50人」に選ばれるほど実力もある有名な人でした。

 面接が行われたのは2月の寒い日でした。錦織先生から聞かれたのは「お前、やる気はあるのか」の一言だけ。私が「はい。将来は海外に行きたいと思っています」と答えると、「じゃあ合格。うちに来なさい」と言われました。

 予想外の一発合格。3月、汗と涙のインターン生活がスタートしました。

 聞き書き・村沢由佳


2021年11月13日号掲載