あなたは食事の時に、好きなおかずを先に食べるタイプですか。
それとも残しておいて最後に食べるタイプですか。つまらない質問に思われるかもしれませんが、この判断は食事全体の印象を左右します。
行動経済学には「ピークエンド効果」という法則があります。人間は、自分の体験を、そのピーク(最も強く感じた時)の喜びや悲しみと、エンド(終わった時)の印象だけで判断するというものです。体験の途中で、その感情がどれだけ続いたのか、あるいはトータルでどれだけの量だったのかなどは判断の材料にならないのです。
ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマン教授は、冷水に手を入れた時の不快感を測る実験で、この法則を証明しました。被験者は冷たい水に60秒手を入れる体験をします。次に、同様に冷水に60秒間手を入れた後に、30秒間少し温かい水に手を入れます。
両方の体験後に、もう一度体験するならどちらかを尋ねると69%が後者を選びました。これは、後者の実験における最後の30秒間の不快感が低かったことで、体験全体の印象が良くなったためです。
冒頭の話に戻りますと、最後においしさを感じた方が食事全体の印象が良くなると考えられます。この他にも生活の中で、ピークエンド効果を活用できる場面は多々あります。
例えばビジネスマンならば、上司に仕事を報告する方法によって評価を変えられます。失敗した件があれば先に報告し、最後に良い報告をすれば全体の印象が良くなります。学生ならば、学校で受けたテストを家に帰って親に報告する際の順番が大事です。点数が悪かったテストは先に見せて、最後に一番良い点を取ったテストを見せるのです。悪い点数のテストがたくさんあったとしても印象に影響しないので、親の機嫌を損ねずにすみます。
いかがですか。ほんのちょっとした工夫で、生活は快適になるのです。ぜひお試しください。
(マーケティングコンサルタント)
(2020年8月1日掲載)
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