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=2時間11分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

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北野武監督が描く「本能寺の変」と戦国

 無残な屍が散乱する戦国の世。北野武が、原作の小説から監督、脚本、編集まで手掛けた「首」は、「本能寺の変」の常識を覆す展開と壮大なスケールで描く戦国時代劇映画だ。

 天下統一を目指し戦いを繰り広げる織田信長(加瀬亮)は、反旗を翻した荒木村重(遠藤憲一)を征伐するよう家臣たちに命を下す。跡目相続を狙う羽柴秀吉(ビートたけし)、徳川家康(小林薫)、明智光秀(西島秀俊)らは、信長の狂気の沙汰のような傍若無人な振る舞いに耐えながら、信長亡き後の天下を虎視眈々と狙っていた。

 信長に忠誠を誓っていたはずの光秀が、「本能寺の変」でなぜ信長を裏切ったのか。その背後にいた黒幕は誰なのか。新たな視点で武将たちの狡猾さと野望が暴かれてゆく。

 名の知られる戦国のつわものたちの中で、狂言回しのように登場するのが忍者たちだ。スパイとして暗躍する抜け忍の曽呂利新左衛門(木村祐一)や、秀吉に憧れ侍大将を夢見る農民の茂助(中村獅童)の目線で、策に溺れ翻弄される武将たちの末路が、冷ややかに映し出される。

 歴史に登場する人物を演ずる俳優たちの豪華な顔ぶれは見応え十分。軍司・黒田官兵衛に浅野忠信、千利休に岸部一徳。秀吉を演じたビートたけしは、コミカルな場面を皮肉たっぷりに生き生きと演じ、お笑い芸人の真骨頂を発揮しているのはさすがだ。

 斬新なのが武士の格式ばった物言いではなく、男たちの野心をむき出しにしたせりふ。さらに男色が武士の心得とされ、男同士の愛と裏切りや憎しみが、男たちを突き動かしてゆくさまを描き出す。 

 手柄を立てた証しを求めて大将の首が飛び、血を血で洗う残酷さ。北野監督の「アウトレイジ」シリーズなど、バイオレンスで見せる過激さをそのまま戦国時代に置き換えたかのようだ。

 これまでの時代劇とは一線を画すリアルな表現や展開に、もしかしたらこれが当時の真実だったのでは—とふと思った時、北野監督の術中に見事はまったような気がした。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年11月25日号掲載

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