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無名

=2時間11分

長野ロキシー☎︎232・3016で公開中

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何が真実で何がうそ スパイたちの攻防劇

 第2次世界大戦下、1940年代の上海。中国共産党、国民党、日本軍のスパイたちが一進一退の攻防劇を繰り広げていた。情報戦と裏切り、何が真実で何がうそか。「無名」は、いくつもの仮面をかぶったスパイたちの姿をスリリングに描いたサスペンスだ。

 日本の傀儡政権の中華民国・汪兆銘政権の下で働く、政治保衛部のフー(トニー・レオン)と部下のイエ(ワン・イーボー)は、日中戦争勝利に向け諜報活動に明け暮れていた。彼らと密談をかわすのは、日本軍のスパイのトップ渡部(森博之)だ。

 猜疑心を隠しながら互いにだまし合う男たち。祖国への忠誠心と愛する女性への思いとのはざまで、人生を犠牲にしなければならない悲しみ。複雑に絡み合う男と女たちは、まるで魑魅魍魎の世界に閉じ込められたようだ。

 「花様年華」(2000年)や「インファナル・アフェア」(02年)など、さまざまなジャンルの作品で知られる名優トニー・レオンが、チェン・アル監督のオリジナル脚本にほれ込んで出演を決めたという。怒りを内に秘めた静かなたたずまいに引き込まれる。

 香港出身のトニーは標準中国語の映画では吹き替えが多く、自身の声が使われるのは今回で2作目という意外なエピソードに驚く。

 大きな見どころの一つがフーとイエのスタントなしの激しいアクションシーンだ。イエ役のワン・イーボーはダンサーとしての高いスキルで、切れの良いアクションを生み出す。

 スパイたちの暗躍というスタイルを取りながら、描かれるのは骨太の歴史ドラマだ。実際に起きた歴史的な事件を背景に据え、チェン・アル監督はリアルさにこだわったという。魔都と呼ばれた1940年代の上海を再現した街並み。ノスタルジックな雰囲気が、独特の光と影を作り出す。

 物語は過去、現在を行き来し、隠された真実を垣間見せながら展開してゆく。観客を欺いてゆく編集の巧みさは、中国映画祭金鶏賞で最優秀編集賞を受賞したのもうなずける。チェン監督が最優秀監督賞、トニーが最優秀主演男優賞を受賞している。

 日本映画ペンクラブ会員、ライター


2024年6月8日号掲載

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