シラノ

=2時間4分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で2月25日(金)から公開

(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

切ない悲恋の物語 映像と音楽が融合

 フランスの名作戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」は、大きすぎる鼻がコンプレックスの剣豪にして才能豊かな詩人の主人公シラノの悲恋の物語。19世紀末に書かれ、これまで数々の名舞台を生み、何度も映画化されてきた。新たにロマンチックミュージカル映画として、「プライドと偏見」のジョー・ライト監督がつくり上げたのが「シラノ」だ。

 17世紀のフランス。軍きっての騎士シラノ(ピーター・ディンクレイジ)は、幼なじみのロクサーヌ(ヘイリー・ベネット)を愛していたが、自分の容姿に自信が持てず、思いは心に秘めたままで告白できない。そんなシラノの気持ちを知らないロクサーヌはシラノと同じ部隊に配属された青年クリスチャンに一目ぼれしたことで、切ない愛の物語が動き始める。

 文才のないクリスチャンからラブレターの代筆を頼まれたシラノは、愛する女性の幸せのためなら、と、自らの思いを込めてラブレターを代筆する。夜の闇に紛れて情熱的に愛を語る有名なバルコニーのシーンでは、クリスチャンという若者の姿を借りて本心を吐露するシラノの姿に胸が痛くなる。

 シラノ役のピーター・ディンクレイジは難病のため身長は132センチ。さまざまな苦難を乗り越えて演劇の才能を開花させた苦労人が、圧倒的な存在感でシラノの苦悩と悲しみを表現する。

 俳優たちが熱唱する楽曲を手掛けたのは、グラミー賞受賞のロックバンド、ザ・ナショナル。オリジナルナンバーに乗せて、ダイナミックなダンスが躍動する。その背景に映し出されるシチリア島の美しさ。繊細な心のひだを表しているかのように、幾重にも重なった薄布が軽やかに揺れるシーンが印象深い。光と色彩が織り成す幻想的な空間が、ファンタジックな愛の世界をつくり出す。

 「手紙とメールの違いはあれ、仮想世界と現実のギャップを知る現代人はみなシラノではないか」とジョー・ライト監督は語る。パンデミックで世界中が疲弊した今だからこそ、愛を伝える大切さを描きたいという監督の願い。映像と音楽が見事に融合された美しいミュージカル映画だ。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年2月19日号掲載