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教皇選挙

  • 4月12日
  • 読了時間: 2分

=2時間

長野ロキシー(☎︎232・3016)で18日から公開

(C)2024 Conclave Distribution, LLC.

秘密主義の舞台裏をミステリータッチで

 ローマ・カトリック教会の最高指導者であるローマ教皇を決める教皇選挙(コンクラーベ)は秘密主義のベールに覆われ、ほんの一握りの関係者しか内情は分からない。「教皇選挙」は、その舞台裏と内幕に迫り、選挙戦の過程をミステリータッチで描いた人間ドラマだ。


 心臓発作で教皇が急死し、新しい教皇を決めるために世界各地から108人の枢機卿がバチカン市国に集まった。心ならずも選挙を取りしきる立場になった首席枢機卿ローレンス(レイフ・ファインズ)は、重圧に耐えながら臨むが、保守派と改革派が対立。何度も投票が繰り返されていく中で、思わぬスキャンダルや不正が暴かれ、候補者たちが脱落してゆく。


 タイトルの教皇選挙を意味する「コンクラーベ」とはラテン語で「鍵と共に」。鍵のかかった密室で行われ、枢機卿たちは期間中は隔離されて外部との接触が禁じられている。その厳重ぶりは徹底している。


 枢機卿たちの無記名による互選により、3分の2、72票以上の得票が条件となる。彼らの人間関係が大きく票数に影響を与えるのだが、聖職者の仮面の下に隠された野心と本心が次第にあらわになっていく展開が息苦しいほどだ。


 密閉された空間という室内劇でありながら、時折挟み込まれるスタイリッシュな映像の見事さ。さらに聖職者たちが身を包む僧衣の黒と、選挙に臨む枢機卿たちの緋色。印象的な色彩のコントラストが、荘厳でありながら不気味ささえも醸し出す。


 選挙の投票場所となるのは、ミケランジェロの天井画「最後の審判」で知られるシスティーナ礼拝堂だ。礼拝堂を埋め尽くすように描かれた絵画がスクリーンに広がり堪能させてくれる。実際の撮影はイタリアの歴史あるチネチッタ撮影所で行われ、本物と見まごうほどの重厚なセットが組まれている。


 英国アカデミー賞の作品賞を受賞。米国アカデミー賞では8部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。主演のレイフ・ファインズはじめ、共演のイザベラ・ロッセリーニ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴーら演技派が顔をそろえ、互いの心の奥を見透かすような緊迫感あふれるシーンの連続に、数々の国際映画祭でアンサンブル演技賞が贈られている。 

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


(2025年4月12日掲載)

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