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室町無頼

=2時間15分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で公開中

(C)2025『室町無頼』製作委員会 (C) 2016 垣根涼介/新潮社

一揆率いた室町武士 アウトローらの戦い

 無頼とは正業につかず無法な行いをする「ならず者」のこと。「室町無頼」は、室町時代、日本史上初めて武士階級として一揆を起こした蓮田兵衛の戦いを描いた直木賞作家垣根涼介の歴史小説の映画化だ。


 1461年。室町幕府第8代将軍足利義政が治める京の都は未曽有の大飢饉と疫病に襲われ、路上や三条河原は屍で埋め尽くされていた。高利貸の元締めとして暴利をむさぼり人々を苦しめていた比叡山延暦寺が襲われ、都は混乱を極めていた。


 無頼漢の蓮田兵衛(大泉洋)は、かつては友でありながら、今は傭兵軍団を率いて幕府の警護役についている骨皮(ほねかわ)道賢(堤真一)と再会する。まるで地獄絵さながらの苦悶に満ちた現実を見ようともせず、享楽におぼれる権力者たち。人の命を軽んずる幕府の無能さに鉄拳を下すべく、兵衛の命を懸けた戦いが始まった。


 蓮田兵衛と道賢。友として互いを認めながらも敵対する立場を貫く2人の男のすごみに圧倒される。


 志を共にして兵衛の下に結集するのは、槍や居合い、金棒使い、弓の名手などさまざまな武術の達人たち。中でも秀逸なのが武士の生まれでありながら孤児となり、村人たちにさげすまれながら生きてきた才蔵(長尾謙杜)の存在だ。独学で六尺棒を武器として腕を磨いてきた孤独な少年が、兵衛に拾われ修行を積みながら、武術だけでなく人間として成長してゆくエピソードは未来への希望の光となる。


 切れのある殺陣など時代劇ならではのアクションが半端ない。一世を風靡(ふうび)したマカロニウエスタンを彷彿(ほうふつ)させる音楽にもわくわくさせられた。


 格差社会に苦しむ人々の怒りが一揆へのうねりとなった。時代を変えるために立ち上がり、権威に屈することなく己の信義を貫くアウトローたち。痛快なエンターテインメントでありながら、フィクションだけでない史実が支える面白さ。知られざる歴史を見せつけられた。時代の歪みを描き切った強烈な物語に、これまでの歴史観が変わるに違いない。

 (日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年1月25日号掲載

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