=3時間9分
長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

(C)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
古き良きハリウッド 黄金時代の人間ドラマ
「バビロン」は、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」(2017)で、最年少で監督賞を受賞したデイミアン・チャゼル監督の最新作。ハリウッドの黄金時代を舞台に、ショービジネスの世界に魅せられた人々を、めくるめく映像と音楽で描いた人間ドラマだ。
1920年代のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は撮影に追われながらも、夜ごと開かれる豪華なパーティーで酒におぼれる日々を過ごしていた。映画製作を夢見てメキシコからハリウッドにやってきた青年マニー(ディエゴ・カルバ)は、運よくジャックのアシスタントとして雇われる。
マニーがパーティーで運命的な出会いをしたのは新人女優のネリー(マーゴット・ロビー)。スターを夢見る野心家のネリーはクレイジーな行動で注目を集め、セックスシンボルとして、のし上がってゆく。だが映画はサイレントからトーキーへと大きく変化し、3人の人生も時代の波に翻弄(ほんろう)されてゆく。
ジャックとネリーは無数のサイレント映画のスターをモデルに作られたキャラクターだが、そこにいるだけで人々を魅了する大スターの輝きを放つブラッド・ピットはまさにはまり役。マーゴット・ロビーの大胆な衣装と演技に圧倒される。
古き良き時代のミュージカルやジャズをこよなく愛するチャゼル監督は、物語の中に、名作にオマージュを捧げたシーンをいくつも登場させ、映画ファンを楽しませる。せりふと演技力を求められ、現実の厳しさに自信を喪失し苦悩するスターたち。そんなサイレント映画からトーキーへの変遷をコミカルに描いた「雨に唄えば」(1952年)や、奏者たちが主役になった音楽映画で、新時代を告げた「ジャズシンガー」(1927年)、大がかりな野外やスタジオの撮影風景も、百年に及ぶ愛すべき映画の歴史を堪能させてくれる。
「バビロン」とは、聖書に描かれた堕落した都市。享楽的で退廃的な当時のハリウッドにぴったりと当てはまる。虚栄と偽りの世界でも夢を追うことの素晴らしさは変わらない。ゴージャスでクレイジーな体感型エンターテインメントだ。
日本映画ペンクラブ会員、ライター
2023年2月18日号掲載