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56 計画錯誤 計画通り終わらないのは

夏休みと聞くと、新学期の登校日が近いのに宿題が終わっていないときの焦りと不安を思い出しませんか。

 「どうして最初からきちんと計画を立てて、その通りやらなかったんだ」と親に怒られた人もいることでしょう。

 しかし、この「計画を立てた通りに実行する」という行為は簡単ではありません。人間は誰しも、計画に必要な時間、労力、お金などを実際よりも少なく見積もる傾向があるからです。行動経済学では、これを「計画錯誤」と呼んでいます。

 子どもの宿題に限りません。ビジネスマンが立てる仕事の計画や、主婦が考える家事のスケジュールにおいても「計画錯誤」に陥る可能性があります。

 こうなる主な原因は、人間が実際以上に自分自身を高く評価し、将来を楽観的に予測することだと考えられています。この傾向を「ポジティブ幻想」と呼びます。人間は前向きな思考をするからこそ、精神的な健康を保ち、難しい人生の課題にチャレンジできるので、「ポジティブ幻想」は一概に悪いものではありません。しかし計画を立てる作業ではマイナスに働いて「計画錯誤」に至るわけです。

 この過ちは予防する方法があります。まず一連の作業を分解して手順を書き出し、個別の作業ごとに所要時間を見積もった上で全体の時間を算出する方法です。大まかに全体を見て所要時間を算出するよりも正確な計画は可能です。

 そのほかに、初めから作業時間を多めに見積もって締め切りを設定する方法も有効です。注意点としては、過去に経験した作業であっても、費やした時間については、記憶に頼らず過去の記録を確認することです。実際には苦労して時間がかかった作業であっても、それを忘れて、同じことを繰り返すことがあるからです。

 計画通りに物事が進まないのは、「だらしないから」「のろまだから」といった理由だけと限りません。自分の計画がうまくはかどらなくても自己嫌悪に陥らないでください。また計画通りに進まない人を一方的に責めないようにしましょう。「計画錯誤」に陥っているのかもしれませんから。

マーケティングコンサルタント


2021年9月11日号掲載

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