47 ヴェブレン効果 高価だから買いたくなる

中国人団体ツアーによる「爆買い」が注目されたのは2010年代半ばごろのことです。この言葉は、2015年の流行語大賞にも選ばれました。

 日本人もかつて、バブル景気に沸いた1980年代後半〜90年代初頭、欧米に旅行し、ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルなど高級ファッションブランドのバッグなど高価な品々を買い込んだものです。高価なブランド品ほど羨望(せんぼう)の的でした。

 どうして人々は高価なブランド品を欲しがるのでしょう。これは「ヴェブレン効果」の影響だと考えられます。高価であること自体が価値となり、買いたいという欲求を刺激する現象です。その背景には「目立ちたい」「見せびらかしたい」という心理があります。ちなみに、「ヴェブレン」は、「有閑階級の理論」を著した米国の経済学者・社会学者です。

 一般に高級ブランド品は、デザインや品質に優れ、長持ちします。しかし「ヴェブレン効果」の影響を受けた人は、品質が同じ商品で、一方が高価な有名ブランド、もう一方がお買い得の無名ブランドのどちらを購入するかというと、高額なブランド品を選びます。商品そのものではなく、商品を購入することで注目を浴び、自分の価値が高まったような気分を味わおうとするのです。

 自分にブランド志向はないと思っている読者もいるでしょう。でも、誰でも「ヴェブレン効果」の影響を受ける可能性はあります。なぜなら、これは「承認欲求」という人間の基本的欲求の表れだからです。

 自分以外の人間から認められたいという「承認欲求」は、有名な米国の心理学者マズローによれば、「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「自己実現の欲求」と並ぶ人間の5大基本的欲求の一つです。

 この欲求を満たすために、人は実質的な価値以上の金額を払うのです。思えば、バブル時代に大金を浪費したという話はよく聞きますが、大金を残したという話はあまり聞きません。

 浪費の原因の一つに「ヴェブレン効果」があると考えられます。今度、高額の買い物をする前に、「ヴェブレン効果」の影響を受けていないか自問自答してみるのも良いでしょう。

マーケティングコンサルタント


2021年7月3日号掲載