一般にあまり知られていませんが、ファッションなどにおける「色」の流行は、自然発生的なものではありません。
「一般社団法人 日本流行色協会」が中心になって、有識者と会議などを行い、毎年の流行色を決めています。その発表後にアパレルメーカーなどが、その流行色を使った商品を発売します。
人間の感性に訴える「色」の流行が、特定の組織による固定化されたシステムでつくられているわけです。これは「流行の生まれ方」の一つです。
では「流行の広まり方」はどうでしょう。ここでは行動経済学における「バンドワゴン効果」が影響します。これは多くの人が同じ選択をすることにより、その選択肢が、さらに多くの人から選ばれやすくなるという現象です。これは人間の「時流に乗りたい」「勝ち馬に乗りたい」といった心理によって起こります。
バンドワゴンは、パレードの先頭にいる楽隊車のこと。音楽を鳴らしながら進むバンドワゴンの後を付いていく衆人の姿は、「バンドワゴン効果」に影響される人々と重なります。この現象は日常生活でもよく見られます。
例えば、2軒並んでいるラーメン店の片方だけに行列ができていたとしたら、多くの人は行列のできる店に行きたくなります。あるいは選挙の投票行動で、選挙予測報道などで優勢とされた候補者に有権者は投票しがちになります。
小中学生の頃に友達同士で、好きな異性の名前を言い合った経験はありませんか。それまで気にとめていなかった異性に、ほかの友達からの人気が集まっていると知ると、その異性が魅力的に見えることがあります。これも「バンドワゴン効果」です。
ただ、痛手をこうむるケースもあるので注意が必要です。株投資で、急速に値上がりした銘柄があると、バンドワゴン効果の影響で自分も買いたくなってしまいます。そして買った途端に急落して、その損失を後悔します。今後の値上がりを信じ、逆に値下がりの可能性を考えずに、ただ単に流されてしまったわけです。バンドワゴン効果に惑わされないように気を付けましょう。
マーケティングコンサルタント
2021年6月12日号掲載
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