44 確実性効果 絶対的なことに過剰反応

新型コロナウイルスの流行、地球温暖化に伴う気候変動や異常気象、台風災害や大規模地震など、予期せぬ事象がたびたび起きる今日は「不確実」な時代です。

 人間の心理はというと、確実性を重視し、完璧さを求める働きがあります。これを行動経済学では「確実性効果」と呼びます。

 確率90%はかなり高い数字ですが、確率100%に比べると確実性は低く感じます。例えば、あなたがある手術を受けると想定してください。執刀する医師の候補が2人いて、一人は成功する確率が100%、もう一人は90%だとします。医師を選べるならば、あなたは何としてでも100%成功する医師に執刀してほしいと思うことでしょう。

 さて、前回「保険文脈」を紹介しました。これは「保険」と名がつけば、損失のことはあまり考えずに加入してしまう心理です。実は、保険にも「確実性効果」が影響しています。例えば自動車の車両保険は、100%の確率で修理代を補償してくれます。私たちは、この100%の確率での補償にとても引かれます。もし90%だったら保険加入をちゅうちょするかもしれません。しかし、補償が役立つのは修理が必要になった場合です。保険加入を検討する際は、修理することなく保険期間が満了するケースも含めた費用対効果を考慮すべきです。

 確実に起きる確率が100%ならば、絶対に起きない確率は0%です。ゼロという数字に対しても人間は同様の反応をします。

 0%と比較すると、非常に小さい確率でも、起きる確率は数値よりも高く感じます。典型例は宝くじです。2020年の年末ジャンボ宝くじでは、1等は2千万本に1本でした。その当選確率は、0.000005%です。これは非常に低い確率ですが、0%ではないので「当たるかも」と思ってしまうのです。ギャンブルも同様に、もうかる確率は非常に低くても多額のお金をつぎ込んでしまいます。

 私たちは、絶対的なことに過剰に反応するあまり、費用対効果を無視して固執してしまうのです。100%や0%といった確率を重視し過ぎていないかどうか注意を払うべきです。

 不確実な時代だからこそ、確実さを求め過ぎないことが賢明なのかもしれません。

マーケティングコンサルタント


2021年6月5日号掲載