40 最終レース効果 一発逆転に賭ける心理

刑事ドラマで、逃げ場を失った犯人が人質をとるシーンがしばしばあります。

 取り囲む警官隊に対して、犯人は人質の命と交換に逃走用の車などを要求します。うまく逃げられる可能性はほぼゼロなのに、追い詰められた犯人はなぜ大きな賭けに出るのでしょう。

 行動経済学の「最終レース効果」の心理を知ると、よく説明できます。最終「レース」効果とあるように、競馬のレースの場面を考えると理解しやすいでしょう。

 一日中競馬場で賭け事に興じていたら、もう最終レースです。もうかっていれば、あえて危険な賭けはしません。しかし大きく負け越してしまいました。あなたは、損を帳消しにするか、もっと大金を得ようと大穴の万馬券に有り金をつぎ込もうとします。実際、注目度が低いのになぜか売り上げが不自然に高くなる最終レースがあるそうです。

 人間は損が重なった最終局面に、成功する確率を高めに見積もって一発逆転の勝負に出てしまうものです。

 この「最終レース効果」の心理に陥らないようにするヒントは、前回紹介した「参照点」にあります。参照点とは簡単に言うと損得の判断基準でした。人は参照点からの変化で損得を測ります。

 例えば、5万円あった所持金が最終レース前に2千円しか残っていないとしましょう。この場合、5万円が参照点になっているはずです。あなたは、当たる確率の低い万馬券を購入して4万8千円の損を帳消しにし、さらにもうかればいいと考えます。この判断基準を修正して最終レース前の所持金2千円を参照点にするのです。そうすれば、堅実で妥当な馬券を購入する選択をし、所持金が増える可能性も高くなります。

 冷静に考えて、その日は負け越しても、できるだけ小さい負けにとどめておけば、翌日以降、挽回しやすいはずです。

 皆さんも、ギャンブルに限らず仕事や家計などで、損が重なることはあるはずです。そういうときは、一発逆転を狙うよりも、できる範囲内で損を解消しておこうと気持ちを切り替えれば、長期的には挽回できる可能性が上がります。追い込まれたら「参照点を意識して最終レース効果を避ける」ことをぜひ試してみてください。

(マーケティングコンサルタント)


2021年5月1日号掲載