36 連作に挑戦


 俳人の松本たかしは昭和5(1930)年に岐阜県中津川を訪れ、当時行われていた霞(かすみ)網猟を題材に連作五十四句を作りました。まだ霞網が禁止される以前で、小鳥を捕らえて食用に供する「小鳥狩」は秋の季語になっていました。


大霧の霽(は)れかゝるより小鳥狩    松本たかし


 木曽谷の朝霧が晴れて、小鳥狩が始まります。


それぞれの座布団もつて鳥屋を見に    同


 掛け小屋が鳥屋で、狩猟のプロが鳥屋師です。


磐石に乗つかけてあり小鳥小屋      同


 その鳥屋は岩に乗せかけたような作りです。


杉葉もてもさと葺(ふ)いたり小鳥小屋  同


 鳥から違和感ないように、杉葉で覆います。


蓆(むしろ)戸を上げて顔出す鳥屋の主  同


 鳥屋の出入り口にはむしろが下げられています。


四段張にして十間の小鳥網        同


 長さ20メートルほどの網が4段に張られているとは、大掛かりです。


網の面にかゝり輝く小鳥かな       同


 あわれ、掛かった鳥は命の最後を輝きます。


小鳥焼く火も一ツ角に大炉かな      同


 大きな炉をしつらえ、その場で焼いています。


鶸(ひわ)焼くや炉縁にならぶ皿小鉢   同


 鶸や鶫(つぐみ)、雀(すずめ)などが掛かっていました。


酒沸いて小鳥焼けたり山は晴       同


 食する人にとって、日本酒は欠かせません。

 俳句は世界でも最短の詩だといわれていますが、このように連作として詠(うた)うことにより、その場の状況をつぶさに捉え、場面場面を臨場感あふれる描写で読者に伝えることができます。皆さんも何か興味を引かれる対象を見つけたら、ぜひ連作に挑んでみてください。


小鳥狩したるその夜の小句会      同


 そして、さすがは俳人、やっぱり俳句会もいたしませんとね。


2022年1月22日号掲載