35 自分ならではの句を


  先日、全国の皆さんから「焼鳥」の俳句が寄せられ、私が選句させていただくという機会がありました。「焼鳥」は四季にわたって食べますが、冬の季語になっています。

 人間は、お互いに共通のイメージを待っています。それゆえに他人の俳句も理解できるわけです。ところが、多くの句が寄せられると、同じ発想の句が出てきます。


煙の香につられて入る焼鳥屋


 焼鳥の香りがすると寄らずには帰れないという句が最も多くありました。


焼鳥と焼酎と愚痴ガード下


 次に多かったのは、焼鳥屋がガード下、高架下に位置しているという発想です。そして、サラリーマン同士が愚痴を言い合うという句も。気持ちはよく分かります。


女房に焼鳥五本土産とし


 家で待つ家族にお土産を買って帰るというのは、優しさの証しでしょうね。


焼鳥を串から外し小言食ふ


 庶民的な焼鳥なのに、串から外して皿に置くのは論外と、やかましく指導する人はいるようです。


焼鳥屋象形文字ののれんかな


 「鳥」という漢字が象形文字で描かれているのれん。それを分けて店に入るという句も、複数寄せられました。皆さん、いろいろなところに着目されるものです。


椅子きしみ尻のはみ出す焼鳥屋


 椅子は小さく、隣の人とぎゅう詰めになる、コロナ禍以前のにぎわい。その楽しさが伝わります。

 短詩型の俳句ではどうしても似通った句ができてしまいがちです。けれど、自分で発想した句であれば、堂々と句会に出しましょう。その結果、「似た句があるよ」と指摘されたら、自分の句を引っ込めましょう。歳時記に載っている先行作品を確認しつつ、自分ならではの新しい発想の句は必ず生むことができます。かもしれません。


2021年12月18日号掲載