2016年、カジノを含む統合型リゾート(IR)整備推進法の成立により、カジノの開業は20年代半ばとされてきましたが、コロナ禍でさらに先になりそうです。
シンガポール、マカオなどカジノで潤う事例から日本経済活性化に期待する声がある一方で、ギャンブル依存症の人が続出することや、治安を心配する人も多くいます。
ギャンブルについて議論する上で、人の判断を誤らせる心理的なバイアスを知ることは重要です。その一つに「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」があります。誤謬とは「あやまち」の意味で、不合理な行動をしてしまうことです。
人はギャンブルに没頭すると、確率論に基づく予測をゆがめて解釈してしまいます。簡単な例として「コイン投げ」で4回続けて表が出たとします。次に出るのは表か裏か。人によって、5回連続で表が出る確率は極めて低い、次こそ裏が出ると予測するかもしれません。その根拠は、5回続けて表が出る確率は低く、1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/32、つまり約3%に過ぎないというものです。しかし、それは誤りです。なぜなら5回目の確率は表も裏も1/2なのですから。「表表表表表」と出る確率も、「表表表表裏」と出る確率も同じ1/32です。
このように、人は無意識に、間違った確率論から判断してしまいます。実はスポーツにも、判断を誤らせる心理的バイアスがあります。バスケットにおける「ホット・ハンド/hot hand」です。難しいミドルシュートや3ポイントシュートなどを、連続して決めるような状況、またはその選手を表現する際に使われます。人は成功が重なる状況を見ると、それが続くと信じてしまうのです。ホット・ハンドを目の前にすると人は今後も失敗しないと信じてしまいます。成功の連続はほぼ偶然であるのに。
過度な期待や欲望は判断の狂いにつながります。ちなみに日本でカジノが将来開業した時の入場料は、海外からの旅行者は無料ですが、日本在住者は6000円かかるそうです。元を取ろうと欲を出すとさらに危険です。ご注意ください。
(マーケティング・コンサルタント)
(2021年2月27日号掲載)
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