29 「オカイズム」の継承
- 2025年8月9日
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カフェ「ココラボ」オープン 誰もが一緒に交流・共創

2022年3月に母の「お別れ会」を終えた私は、4月の新学期とともに新入生を迎え、校長としての仕事に集中していきました。悲しみは癒えるものではありませんでしたが、日常の忙しさが逆に救ってくれる時もありました。
そんな時期に5人姉妹だった母の一番末の妹で、川中島で一人暮らしをしていた叔母から「体の調子が悪くて」と相談を受けました。叔母は、1959年に岡学園に新設されたデザイナー科の初代専任教師として、20年間にわたって教壇に立ち、もちろん母の葬儀にも参列してくれていました。
しかし9月に入って検査入院した叔母は命にかかわる病気を抱え、かなり進行していることが分かりました。本人に伝えるべきか否か悩みましたが、結果そのことを叔母に伝えることなく、そこから1カ月後に息を引き取りました。享年87歳。思いもよらない出来事でした。
叔母の葬儀は私が喪主を務めました。姉妹2人とも手に職を持ち、それぞれの人生を切り開き、一生懸命生きてきた母と叔母。その2人の晩年の後ろ姿からは学ぶことも多く、私自身が今後の自分と向き合う大切な機会を与えてもらったように思います。母や叔母はずっとそばで今の私を見守り、そしていつも「正子さんなら大丈夫」とほほ笑んでくれているような気がしています。

2人を見送り、長く続いたコロナ禍の不安からもようやく解放され、生活も落ち着きを取り戻してきた頃、学内外で自粛してきたいろいろなイベントができるようになり、それに伴い私の仕事もまた日を追うごとに忙しくなっていきました。
2024年、私は母の誕生日である4月22日を岡学園の創立記念日として新たに設定しました。「心身に財産」という言葉を学生に語り続けた創立者の思いを「オカイズム」として伝え続けるために、あえてこの日を選び、生前の母の姿を知らない学生たちにも母校の根となる理念を繰り返し伝えていくことにしたのです。
そして創立79年を迎えた今年4月、新しいファッションの校舎とともに、カフェ「ココラボ」がオープンしました。土地取得から建物の完成まで5年かかった事業でした。「ココラボ」に込めた思いは、在校生、卒業生、地域や企業、行政の皆さま、小さな子どもから大人まで誰もが一緒に交流・共創できる「居心地の良い場」づくりです。ここからたくさんのコラボや交流が生まれ、さまざまな「縁」が広がっていくことが私にとって何よりの願いです。来年ありがたいことに80周年を迎えるこの岡学園にとって、どんなに時代が変わっても、また先が見えない不安定な時代であっても、未来に向かって、目の前にあることに一つ一つ悔いなく挑戦していくことが、大切に伝えていく「オカイズム」だと思っています。
次回、最終回となる「私の歩み」では、この長野で親子2代でつないできた岡学園の今後への思いと、皆さまへの感謝を語らせていただければと思っています。
(聞き書き・中村英美)
2025年8月9日号掲載



